文字サイズ
自治体の皆さまへ

【特集】下関発!デジタル水産業(1)

1/38

山口県下関市

「おきそこを、なんとかしたい!」
この想いが結集した令和3年、下関漁港は一体となって漁業支援アプリを導入しました。
1年も経たず、漁港の人たちの働き方が改善し、販売価格も上昇。
「非常にインパクトが大きく、他地区でも参考となる事例」と評された、下関漁港の取り組みに迫ります。

■01沖合底びき網漁業は、今
下関駅西口を出ると、爽やかな潮の香りが鼻をくすぐり、目の前には下関漁港が現れます。
下関漁港は、かつては遠洋・沖合漁業の基地として栄え、多くの漁船が入港。昭和41年には日本一の水揚げ量を記録しました。現在も、フグの取扱量日本一、アンコウ水揚げ量日本一を誇るなど、全国的にも重要な漁港です。
この下関漁港全体の4割以上の水揚げ量を占めるのが、沖合底びき網漁業(通称おきそこ)です。2隻の漁船が並んで1つの網をひき、交互にその網を取り込む、全国でも数少ない漁法で、1回の出漁期間は5~7日間。主に長崎県対馬から萩市見島の沖で、アンコウやノドグロなど高級な魚を取っています。
魚価の低迷、後継者不足などにより、操業する船が減り、昭和60年度は24ケ統(48隻)が操業していましたが、現在は5ケ統(10隻)が操業。水揚げ量は年々減少しています。

■おきそこを、なんとかしたい!
このおきそこの状況をなんとかしなければと、危機感を抱いた宮本洋平さん(山口県以東機船底曳網漁業協同組合の代表理事組合長)は、松本浩文准教授(水産大学校)に相談します。「漁師町で育ち、水産業に貢献したいという想いがありました」松本准教授はその時を振り返ります。
松本准教授は県のサポートを受け、最初に漁業関係者の働き方の改善に乗り出します。船舶自動識別装置を活用して、船の入港情報を関係者へメールで配信する仕組みを構築。さらに、入港予定時間も配信できるように改良しました。
「私の父がおきそこ船に乗っていましたが、入港予定時間になっても帰って来ないんですよね。みんなでずっと待っていました」と、松本准教授は改良への想いを語ります。
「漁業者と雑談をしていた時『沖での漁獲情報の整理が睡眠を圧迫している』という話を聞きました。その時初めて、漁業者がデスクワークもしていることを知りました」この時、松本准教授に、アプリの構想が芽生えます。
構想を温め、令和元年度から3年間のプロジェクトで、アプリの開発が行われました。
松本准教授は船に足を運び、一連の作業から課題を洗い出します。そこで課題だったのは、やはり煩雑な漁獲情報(魚種、魚の大きさ、漁獲量など)の整理作業でした。
おきそこでは、獲れた100種類以上の魚を、船上で種類と大きさ別に箱詰めしています。これまでは、魚種や漁獲量を手書きで紙に記録。無線で2隻の情報を共有し、漁労長が電卓で集計していました。この作業を効率化するアプリが、ついに開発されたのです。

■02広がる漁業支援アプリ
アプリ共有の広がりで、可能性も広がる

◇簡単な操作で情報が共有できるように
開発されたアプリでは、漁業者の操作は、箱詰めした魚種などの情報を入力するだけ。
入力したデータはアプリで加工。魚種、漁獲量、水揚げ予想金額などの情報が、タブレットに表示されます。
さらに、2隻をローカルエリアネットワークでつなぐことで、それぞれ入力した漁獲情報は、自動集計されます。
こうして、これまで漁労長だけが把握していた情報を、乗組員全員で共有できるようになりました。
また、船に搭載しているGPS(全地球測位システム)を使って、船の位置情報や「投網中」といった運航状況を陸からも確認できます。入港予定時間は、箱や食料、燃料を運ぶ関連業者や、家族にも配信されるようになりました。

◇アプリ共有が広がり画期的な仕組みが誕生
ついにアプリは、市場にも導入されます。「おきそこ船に乗る水産大学校の卒業生とアプリの話をしていたら、『市場でも活用した方が』と言われて、なるほどと思いました」と松本准教授は、市場に導入したきっかけを話します。
さらに令和3年8月には、下関のおきそこ船全船にアプリを導入します。
「当初は一部の船だけでアプリを使っていました。それでは市場に流す漁獲情報にデジタルとアナログが混在し、逆に手間だと分かったのです。全船にアプリを導入すれば、市場全体にデジタル化が浸透し、流通へもつなげられるのではと考えました」と宮本さんは振り返ります。
こうして市場と全船がアプリを導入したことで、魚種別の需要を卸売業者から漁業者へ返す、画期的な仕組みが生まれました。

◇アプリの仕組み
漁獲情報
漁業者

漁獲情報(魚種、漁獲量)を入力する

漁獲情報を基に、データが加工される

各船の漁獲状況が自動集計され、卸売業者とも共有
市場の需要が分かる

卸売業者

市場の需要を5段階で評価し、入力する

箱業者

毎朝6時に、箱の使用状況をメールで自動配信

船の位置情報

船が漁港から一定の距離に到達すると、速度と距離から入港予定時間を算出し、メールで自動配信

会社 市場 関連業者 家族

※詳細は本紙をご覧ください。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU