■山口県立下関西高等学校放送部
聞き手に伝わる言葉を選ぶ力。
正確に伝える発声の技術。
「伝える」を磨き上げる。
◆人物・情景を浮かび上がらせる
▽音を粒立てる
ただ言葉を発するのではなく、一音一音に心を込め、聞く人の心に響くように語り掛ける。声の粒は、時に柔らかく、時に熱く、大きくなって、空気を震わせながら、言葉の先にいる聞き手の胸に降り注ぐ。その音は、心の奥深くで温かい余韻を残して、音が鮮やかに情景を結ぶ。
今回、山口県立下関西高等学校の放送部を紹介するため、取材に赴き、実演を聞かせてもらいました。同じく人に伝える仕事をさせてもらっている者として感銘を受けました。
情報を正確に伝える話し方や表現力といった技術を磨くとともに、聞く人に響く内容・構成を練って「いかに自分の言葉で伝えるか」「伝えたい人物や情景を鮮明に浮き上がらせるか」を大切にし、日々の練習に取り組んでいるとのこと。アナウンサー顔負けのアナウンス技術と表現力、構成力に圧倒されました。
「音を粒立てて、一音一音を大切にすることを心掛けています」と7月から部長になった2年生の入江美優さん。「どのように言葉を発声すれば聞き取りやすいか、トーンや抑揚など、伝える・伝わる技術を研究しています」と、放送部の活動を「面白い」と笑顔。
▽放送部の活動
出場するコンテストは年2回。NHK杯全国高校放送コンテスト(Nコン)と全国高等学校総合文化祭(総文)があり、テレビやラジオの番組制作等の部門もありますが、西高放送部はアナウンス部門と朗読部門に注力しています。「多様化・複雑化する社会で、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力は欠かせないと考えていて、放送部の活動は、この資質向上につながっています」と顧問の佐々木紀子教諭。Nコンのアナウンス部門は、校内での出来事の取材、ニュース原稿の作成を事前に行い、大会当日に自らアナウンス。その内容が審査されます。今年のNコン山口県大会で最優秀の山口放送局長賞を受賞し、全国大会に出場した3年生の竹本さくらさんは、同校サッカー部で唯一の女子選手である、同級生の吉武春歌さんを取材しました。親しみやすい性格や、どれだけサッカーが好きかという人物像を浮き上がらせることに思いを巡らせたそうです。
▽地域に貢献 成長の糧に
令和7年の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)は山口県での開催が予定されており、J:COMアリーナ下関で卓球競技と新体操競技が行われます。卓球競技の場内アナウンスは、西高放送部が務めることになっています。
目下の目標は、11月上旬に開催される総文。アナウンス部門のテーマは「地域の話題」。「取材させてもらった地域の方のことを、しっかりと伝えたい。結果という形で恩返しができれば」と2年生の中田銀時さん。「伝えたい」思いが成長の糧になっています。
(写真)Nコン山口県大会で最優秀の山口放送局長賞を受賞した竹本さくらさんに実演してもらった。
(写真)市内で開催される大きなイベント等のMCを務めることも。
(写真)基本の発声練習
部長の入江さんのリードで発声練習。大きな声を出すことと滑舌をよくすることは、伝える技術の基本として大切にしている。
(写真)部内での批評会
部員全員を前に本番同様の実演を行う。実演後、率直な意見を言い、改善点などをみんなが指摘する。
佐々木先生曰く、「生徒同士が批評するようになって、上達が目覚ましくなりました」「子どもたちの伸びる力はすごい」と先生の教育観も変わったそう。
(写真)正しい日本語を使う
発音・アクセントを確認して、常に正しい日本語を使うよう心掛けている。
※写真は本紙参照
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