■Vol.172 藤本秀規誉(ひできよ)さん(通津在住)
民謡団体の藤本流秀規誉会の会主や80団体から成る岩国市文化協会の会長を務める。
平成30年に岩国市文化功労賞を受賞。現在は後進の育成や民謡を広め伝える活動に取り組んでいる。
「何十年民謡をやっていても、求めている音を出せない時がある。これだからやめられない」と話すのは藤本秀規誉さんです。
藤本さんは大阪で生まれ育ち、何事にも興味を持つ少年だったと言います。毎日ラジオから流れてくる民謡に興味を惹かれたのは自然のことでした。
「中学生の時に民謡に魅了されて、よく山に行って大声で歌ってたんだよ」と当時を振り返ります。
民謡やその伴奏楽器である三味線への熱い気持ちを持ちながらも、本格的に習う機会がなかった藤本さん。27歳で結婚を機に岩国に移住します。
見知らぬ土地や人の中で忙しく生活を送っている中、「妻に公民館で民謡の教室があるから行ってみたら?」と言われて教室に参加したことで、藤本さんの人生は大きく動き出します。
「民謡の先生に出会い、三味線を触った時にこれだと思った。それから週3回の練習に参加すると、夢中になって深夜を越えて家に帰って来るような生活だったけど、好きだったからね」と民謡への没頭っぷりを笑いながら話します。
三味線との運命的な出会いから約50年が経とうとしている今でも毎日稽古を欠かさないという藤本さん。
「僕は生涯現役なんです。ここまでできたから終了なんてことはない。まだまだ自分を高めていきたい」
そんな藤本さんを魅了し続ける民謡の魅力について尋ねると「昔の人の労働や生活、しきたりの場などで歌われていたもので、歴史や文化に根付いた歌なんです。学べば学ぶほど奥深い世界なんですよ」
民謡と共に生きてきた藤本さんはある想いを持っています。
「伝統文化に触れたいと思う若い人が少ない。民謡でなくても何か伝統文化に触れて、生涯打ち込めるものに出会ってほしい。私の人生を懸けて過去から紡がれてきた文化を未来に渡していきたい」と藤本さんは今日も、みすじの糸で美しい音を奏で続けます。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>