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ふるさと歴史アラカルト

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山口県岩国市

■明治時代の本屋さん
皆さんは読みたい本がある時、どのようにしてその本を手にしていますか。図書館や知人から借りたり、電子書籍や通販を利用したりとさまざまな方法がありますが、書店で実際に手に取って購入する人も多いのではないでしょうか。今回は、明治時代の岩国における書店について紹介します。
書籍の出版が盛んになったのは、印刷技術と製紙業が発達し、書籍に対する関心も高まった江戸時代半ばごろです。しかしこの頃の岩国に書店があったかどうかは分かっていません。岩国の人々は日用品と共に書籍も扱った小間物屋(こまものや)などで購入するほか、借りて書き写したり、岩国以外で入手したりして、書籍を読んでいたと考えられます。
岩国に書店の存在が確認できるのは、明治時代に入ってからです。当時繁盛していた商店を掲載した「山口県巨豪商早見便覧(※1)」には、新小路町(しんこうじまち)(現在の岩国市錦見)に本店を構えた文照堂(米谷本店)という書店が紹介されています。描かれた店頭の様子を見ると、日本の歴史を記した「日本外史(にほんがいし)」や手習い学習に用いられた「千字文(せんじもん)」といった江戸時代から続くベストセラーに加え、欧米の知識を取り入れた書籍や、雑誌・新聞・文房具も扱っており、古本の売買も行っていたようです。
さらに、文照堂では出版も手掛けていました。東沢瀉(ひがしたくしゃ)の「国史臆議(こくしおくぎ)」や、旧岩国藩士が記した「周防玖珂郡地誌略」など、岩国出身者による著作を主に出版していました。現代では出版から販売までを一つの書店が行うことは珍しいですが、江戸時代の大規模な書店ではしばしば行われており、文照堂もその商法を用いていたと見られます。なお「山口県巨豪商早見便覧」には岩国の書店は文照堂しか掲載されていませんが、同時期には小規模な書店が他にも存在したことが確認されています。
今では当然のようにある存在も、かつてはそうではなかったり、今とは異なっていたりすることがよくあります。周りのものの歴史を探ると、いつもと違った一面が見えるかもしれません。

※1 明治19(1886)年に刊行された、周防部(現在の山口県東部)の巨大商店約100件を収録したガイドブック

◇岩国徴古館(いわくにちょうこかん)
昭和20年に旧岩国藩主吉川家によって建てられ、その後岩国市に移管された市立の博物館
住所:横山二丁目7-19
【電話】41-0452
休館日:月曜(祝日の場合はその翌日)

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