■芸術の秋に「美に出会う」
芸術の秋ということで、みなさんは岩国市出身の洋画家・名島貢(なじまみつぎ)をご存知ですか。
今回は美術教育にも尽力した名島貢という人物を紹介するとともに、岩国徴古館の所蔵品で、名島が描いた風景画「ハイデルベルグの夕立」という作品を紹介します。
名島は、明治38(1905)年に麻里布町で生まれ、山口県師範学校本科(現在の山口大学教育学部)、東京高等師範学校(現在の筑波大学)の図画手工専修科を卒業したのち、昭和3(1928)年から美術教員の道を歩むことになります。
翌年、台湾総督府で働くことになった名島は、台南(たいなん)師範学校(現在の国立台南師範大学)や台北(たいぺい)第一高等女学校(現在の台北市立第一女子高級中学)など台湾の学校で美術の指導にあたりました。
戦後、日本に帰国してからは、山口女子短期大学(現在の山口短期大学)や岩国短期大学などで美術を教えたのち、岩国新美術協会で会長に就任するなど、故郷である山口県の美術教育に尽力しました。
「ハイデルベルグの夕立」の題材となったのは、ドイツの都市・ハイデルベルグを流れるネッカー川と、そこに架かる九連の石造アーチ橋、アルテ・ブリュッケです。作品の構図は、同都市にあるハイデルベルグ城から見た風景を描いたものと考えられます。
この作品を見ると、どことなく岩国山から見た錦川と錦帯橋の風景を彷彿(ほうふつ)とさせます。名島が、故郷である岩国の風景を意識したのかどうかについては定かではありませんが、暴れ川であったネッカー川に、橋を流されないための工夫として石造アーチ構造が採用されたという橋の歴史は、錦帯橋の歴史にも通じる部分があります。
今回紹介した作品のように、絵画を鑑賞するとさまざまな気付きが出てくることがあります。今年の秋は、みなさんも岩国徴古館を訪れて、「美」に出会ってみませんか。
・12月15日(日)まで企画展『美に出会う』を開催しています
▽岩国徴古館(いわくにちょうこかん)
昭和20年に旧岩国藩主吉川家によって建てられ、その後岩国市に移管された市立の博物館
住所:横山二丁目7-19
【電話】41-0452
休館日:月曜(祝日の場合はその翌日)
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