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人権コラム No.126 つながり ぬくもり

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山口県平生町

『悪魔のささやき』

地域交流センターから町役場に行くときの川沿いの狭い横断歩道で、歩行者も自転車も自動車もだれもいない昼下がり。目の前の信号は赤。ふと頭をよぎります。エイ!渡っちゃろうかと。四十年ぐらい前のイタリアで、ガイドが次のように言っていました。「道路は、もともと人が歩くためのものだから、信号は自動車が守るためにある。歩行者はいつ渡ってもよい。しかし、交通事故に遭ったら、何が何でも歩道にはい上がれ」と。
確かに昔の道は人間の専有物でした。その後、自転車が登場しましたが、自転車は人間の歩行に遠慮しつつ走っていました。次に車社会となると、圧倒的な力関係で、人は道路の横断を、地下にもぐるか陸橋を昇るかで苦しめられています。下校のとき、昔の子どものように雨を避けるための軒下や、強い日差しを避けるための日陰を求めて、道をジグザグに歩く自由もなくなりました。
二カ月前のころ、同じ交差点で車も自転車もいない静かな昼下がりのことです。赤信号のときに親子が通りかかりました。母親が一歩踏み出そうとしたそのとき、園児がしっかりと母親の服を引っ張り、信号を指さして話しかけていました。別の日には、小学生二人が当たり前のように、赤信号が青になるまで待っていました。
私は、同じ状況下で、誰も通らないから行け!との心のささやきに負けて渡ったこともありました。これは、法や規則を守ることの重要性から絶対に許される行為ではありません。
しかし、人間はほぼ全員、善と悪を勧める二つの心を持っています。悪の心も、すべての生活の場面で出番を伺っています。この悪魔のささやきを押さえ込むにはどうすればよいでしょうか。
子どものような純真で屈託のない生活ができればよいのでしょう。
しかし、世俗にまみれた私たちには、これくらいなら許されるだろうと、安易に悪魔のささやきに負けてしまうこともあるのです。この悪魔のささやきを鎮まらせ、眠ってもらう必要があるのです。
人間の弱い心に巣くうのが悪魔ですから、良いことをしようとする心の方を強固に育てなくてはなりません。そのためには、一日一善とか、人の気持ちを大切にするなど、座右の銘のようなものを持ち、それを頑固に実践するならば、強い心の基で誠実な人生が送れると思います。
そして、すべての人が同じ思いで悪魔のささやきを押さえ込めたなら、現在、社会問題になっている凶悪な犯罪もなくなり、すべての人が平等で明るい社会が戻ってくることでしょう。

平生町人権教育推進協議会
(事務局:町教育委員会)

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