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人権コラム No.128 つながり ぬくもり

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山口県平生町

『型』

東京都新宿で夜間に集まっているある若者に、なぜ家に帰らないのとの質問の返事は「家に帰ると親がうるさいので帰りたくない」でした。親から帰宅時間を守ることや、礼儀作法、みだしなみ、言葉遣いなどの小言を言われ、しつけの強要と自由の束縛への反発でしょうか。
しつけとは、私たちの祖先が、集団生活を円滑に送るために、言葉遣いや立ち居ふるまいの仕方などを、日本の自然環境にもなじむように長い年月をかけてまとめあげた型を、形として表したものなのです。この稿では、形とは、同じ形のものを作るための型から作られた物とします。
現代の社会風潮の中で、自由奔放な生活をしている若者が沢山います。その若者は、型にはまった形を表現することは、規則一辺倒で融通の利かない頑固な人間と見なされるし、自分がすれば周りから浮いてしまうと思っているからではないでしょうか。
私が型を意識したのは、見よう見まねで野球のピッチング中に「球に体重がのってない」と指摘された時でした。投げる球は頭の上にあるのに、その球にどうやって体重をのせるのかと理解不能でした。しばらくしてこれはピッチングの基礎基本の型を徹底的に練習せよとのことだと思いました。
東京オリンピックは数々の感動を残して終わりました。私は、この稿を書くにあたり、空手の「空手形」の競技を鮮明に思い出しています。
その競技は、空手の型を学び、それを正確に形として表現するのですが、それに出場した喜友名諒(きゆな りょう)選手、清水希容(しみず きよう)選手のことです。両選手が、徹底的に型を追求し、形として表現された、迫真の表情とすさまじい迫力にあふれた競技は、実に美しくて神々しく、鳥肌が立つような感覚に襲われたことを覚えています。そのとき、武道の礼儀作法の美しさも改めて認識させられました。
型にはまることは自由を束縛されるようで、青少年だけでなく成人でも忌避しがちです。しかし、剣道、茶道等、道と付くものや、音楽、美術、俳句、詩吟など、日本の文化を学ぶときは、自ずと型から入っているのではないでしょうか。
自然と調和をしながら、しつけも含めて形作られた日本の文化は、世界に誇るものが多々あり、これを後世に繋ぐことも私たちの使命です。
時代と共にものの考え方は変わっていきます。だからこそ、当然起こるであろう不易と流行の、日常生活や文化における不易の尊さに思いをはせるべきではないでしょうか。

平生町人権教育推進協議会
(事務局:町教育委員会)

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