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人権コラム No.130 つながり ぬくもり

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山口県平生町

『惻隠(そくいん)の情』

半世紀以上もこの世を生きながらえてきた私ですが、何気なく聞いていたラジオ番組で、恥ずかしながら、ある言葉に初めて出会いました。
風前の灯のように、ほぼ消えかかっている日本語に、「惻隠の情」という言葉があるそうで、日本人として忘れてはならない言葉だというような内容でした。
「惻」も「隠」も「同情し心を痛める」という意味で、他人が困っている様子を見て、自分のことのように心を痛めるような感情を言い表す言葉だそうです。思いやりの心と似ていますが、その表現では十分に言い表せないような、もっと深い情愛に満ちた、昔から日本人の心の奥底にひそむ言葉だということでした。
闇バイトに起因する多くの凶悪な事件や、迷惑系ユーチューバーによるさまざまな不適切動画が問題になっています。日本社会全体のモラル低下が叫ばれ、個人主義・利己主義がはびこる今の日本人の心にとって、消えてしまうにはあまりにももったいない、大切にしたい言葉だと私には思えました。
この「惻隠の情」を育むためには、誰の心にもひそんでいる「わがまま」を抑えることから始め、次のような行動を徹底することが肝心であるとのことでした。
具体的には、
(1)返事をきちんとすること
(2)あいさつをきちんとすること
(3)靴のかかとを揃えること
(4)姿勢を正すこと
(5)朝寝坊をしないこと
の五つだそうです。
さらに「惻隠の情」を育む上で大切なこととして「掃除をきちんとすること」も付け加えられていました。
それは、掃除は私たちの内なる心に、一定の秩序を作り出すのに効果的であり、掃除は私たちの身辺と自身の心の関係に、秩序をつくっていくのによい作業だということでした。ちゃぶ台のまわりや引き出しの中、また玄関やトイレなどをきれいに磨き上げ、整頓していくうちに、私たちの心の中も自然に整えられるというわけです。
どれもこれも、当たり前のように思える習慣ではありますが、自分自身の状況を振り返ると、とても十分だとは言い難いものです。
私は、ラジオを聞きながら、日本人のDNAの中に組み込まれているであろう「惻隠の情」という感情が、より多くの人に意識されるなら、これからさらに住みよい町になっていくだろうと考えます。
まずは、自分自身の実践から始めたいと思います。

平生町人権教育推進協議会(事務局:町教育委員会)

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