▼慢性腎臓病の診断と治療
市立病院済生館腎臓内科長 出川 紀行
慢性腎臓病は、たんぱく尿などの尿異常、画像診断や血液検査、病理所見で腎障害がある状態や血清クレアチニン値を基に推算した糸球体濾過量(しきゅうたいろかりょう)が60ml/分/1.73平方メートル未満の状態が持続する病気です。
社会の高齢化に伴って、日本の慢性腎臓病患者は1400万人を超えると推定され、成人の7~8人に1人がかかる国民病となっています。慢性腎臓病が進行し、末期腎不全になり、透析治療を受けている人は約35万人で国民の400人に1人に当たります。慢性腎臓病は、心臓・血管病である心筋梗塞、心不全、脳卒中の発症および死亡のリスクを上昇させます。
慢性腎臓病の初期には自覚症状がありませんが、尿検査、血液検査で診断が可能です。そのため、健康診断や医療機関での検査によって慢性腎臓病を早期に発見し、適切な治療を行うことで慢性腎臓病の重症化を防ぎ、心臓・血管病の発症を抑制することができます。
慢性腎臓病治療は主に食事療法(塩分制限、場合によってはたんぱく・カリウム制限)、運動療法、血圧コントロール(降圧剤服用も含む)でしたが、2年前から腎機能の進行を遅らせる新薬が保険適用となり、既存の薬と組み合わせることで、さらなる進行遅延効果が期待されます。
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