明けましておめでとうございます。
村民の皆様方におかれましては、穏やかな正月をお迎えのことと謹んでお慶び申し上げます。村政の運営にあたり、常日頃から格別のご理解ご協力を賜り厚くお礼を申し上げます。
令和6年元日の夕刻、石川県能登半島を震源とする巨大地震が発生しました。東日本大震災の恐怖が再び脳裏に蘇った令和6年の幕開けでありました。辰年は龍を意味し、竜巻などの自然現象を起こす大自然の脅威を象徴するものと言われていますが、不幸にもそうした一年を懸念せざるを得ない年の始まりとなりました。
1月、2月は少雪、暖冬で、肘折の2月末日の最大積雪深が観測史上最低の107cmでした。暖冬は「地球温暖化」や「エルニーニョ現象」が原因とされておりますが、これが発生すると異常気象になりやすいと言われております。夏の豪雨による災害だけはないように願うばかりでしたが、7月25日から26日にかけ秋田と山形の県境に梅雨前線が停滞したことにより線状降水帯が発生。庄内・最上地域が豪雨に見舞われました。本村においても、気象庁肘折観測地点において観測史上最大の日降水量212.5ミリメートルを記録し、河川や道路、農地等を中心に甚大な被害が発生、災害救助法の適用に至りました。人的被害がなかったのが幸いでありました。
こうした災害の最中でありましたが、待望の国道458号本合海バイパスが、事業着手から28年を経て、8月4日に完成いたしました。国道47号新庄酒田道路、東北中央自動車道に最短距離で繋がり、周辺地域への通勤通学の利便性や物流の効率化、観光産業へ大きな追い風となり、社会的経済的発展に大きく寄与するものと確信しております。道路は地域住民の暮らしを豊かにする欠かせないインフラ整備であり、首都圏とつながった東北中央自動車道などの高速交通網へのアクセスが容易になりました。本村においても高速交通網の恩恵を最大限に享受することができるよう、生活環境の向上につながる道路の整備や、災害時に孤立することが考えられる地区への迂回路などのルートの確保を図り、村内の道路網の整備を促進して参ります。災害により大きな打撃を受け疲弊した農業ですが、出来秋には、米の価格が高騰しました。令和5年産の米は、夏の猛暑と少雨により生産量が減少。一等米比率も大きく低下しましたが、コロナ禍の収束やインバウンドの回復等により外食産業が急拡大し、春以降は米の需要が増加したことで、世に言う「令和のコメ騒動」が勃発しました。
こうした状況の下、令和6年産は高温障害に対する農家個々の栽培技術が対応できたことで、一等米比率が95%を超える見込みとのことです。米価が大幅に上昇し、ようやく持続可能な稲作経営ができる水準に近づいたように思います。
令和7年度の基盤整備事業は、白須賀地区に続き、清水、合海地区で本格化します。村の水田農業の存亡をかけた事業と考え、取り組んでおりますが、今後は、基盤整備事業が完了した地域から計画的な畑地化を推進し、園芸作物などの高収益作物への転換を図っていかなければなりません。
中山間地域においても6年産米の価格が維持され、離農に歯止めがかかることを期待するものですが、農家の高齢化は避けることができません。本年は、中山間地域等直接支払制度第6期対策の初年度を迎えますが、過度な負担にならない継続可能な労力に見合った取り組みを計画し、中山間地域の組織力を結集して本制度の有効活用を図っていただきたいと思います。
園芸作物においては、近年産地の自然災害が影響してか市場単価が高水準で推移し、何とか生産額は確保しておりますが、主力品目であるトマト生産農家の事業継承と新規就農は喫緊の課題であります。産地化は一夜にして成らず、大蔵ブランドは一朝一夕で今日を迎えたわけではありません。40年の歳月を費やし、農家、JA、村が一体となって取り組んできたものであり、ここで絶やすことなく、県下一のトマト産地を維持していきたいと思っております。
観光産業につきましては、本村の宿泊者数は令和元年までのコロナ前と比べ、依然として70%程度であり、対前年比においても90%と伸び悩みが顕著となっております。国内の観光需要は本格的に回復し、県内各地の観光地でも国内外の旅行者で再び賑わいを取り戻しております。しかし、観光産業が持続可能な産業として地域経済を支えていくには、「稼げる産業」へと構造転換していく必要があります。まずは、観光客のニーズに合った観光推進母体の再構築、観光施設の運営や観光資源の見直し、各旅館施設においては従業員不足の課題を解決しなければなりません。多くの方に訪れていただくことも重要ですが、「数」から「質」へシフトし、再び来ていただくための質の高いサービスを提供できるよう、今ある資源の磨き上げを重視することが大切ではないかと考えております。
最後に、多くの皆様からご意見をいただきました役場新庁舎建設に関しましては、村ホームページ等でも随時進捗状況についてお知らせして参りました。建設用地の造成工事は8割方完成しております。同時期に委託していた地質調査から、基礎工事における支持層については、地下10mに支持層が確認されております。液状化については、地層全体が揺らぎ建物に影響することはないと思われますが、基礎工事において十分な対策を講じて参ります。「軟弱地盤」へのリスクも大きな心配はなく、実施設計も間もなく完了し、7月の着工に向けて準備を進めて参ります。
今年は巳年。蛇は、古くから豊穣神・天候神として信仰されてきました。脱皮をする蛇のイメージから、巳年は「復活と再生」を意味します。また、次の生命が誕生する時期など、新しいことが始まる年になると言われる「巳」を「実」にかけて「実を結ぶ」年とも言われるようです。まずは、災害からの復活と再生に取り組んで参ります。
一方で、災害発生リスクは常に身近に存在し、いつ発生してもおかしくないということを改めて肝に銘じ、災害の防止、被害の最小化のための備えを強化できるように心がけていきたいと思います。
未来予測は難しいものですが、本村を取り巻く環境の変化に素早く対応し、村民の不安は小さく、希望は大きく、未来へ繋いでいく。そういう村政運営を行うことが私の使命であると思っています。
結びに、本年が穏やかな年であり、村民皆様にとりまして、幸多き素晴らしい年となりますよう心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶といたします。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
大蔵村長 加藤正美
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