文字サイズ
自治体の皆さまへ

特集 メダカと共生する未来へ(1)

2/36

山形県庄内町

メダカを守りたいー。子どもたちの想いが叶えたメダカとの共生

■メダカ保全活動の始まり
家根合集落は最上川水系の末流のため、常に水不足に悩まされていましたが、昭和50年代に庄内各地で行われた圃場整備に遅れをとっていました。平成8年頃に満を持して圃場整備に取り掛かり、平成12年に事業着工を予定していたところ、時を同じく、余目第一小学校5年生が総合学習で絶滅危惧種に関わる学習を行っていました。当時の家根合集落は良好な自然環境に恵まれ、メダカをはじめ、いろいろな生物が生息していましたが、圃場整備によって豊かな自然環境が失われる恐れがあり「メダカを救いたい」という気持ちが子どもたちに芽生えました。これがメダカ保全活動の始まりです。

■メダカと共生するために
その後は同校児童と圃場整備関係者によるメダカの保全についての話し合いや、検討会が開かれ、関係者も環境保全を盛り込んだ整備に合意。整備計画を練り直すことになりました。併せて、子どもたちと関係者によるメダカの捕獲(メダカSOS救出作戦)が実行され、田んぼに接続した水路でメダカを捕獲。捕獲したメダカは、集落内の仮設保全池に移されました。その後平成15年に完成したメダカ保全池(通称メダカ池)に移され、安心安全な環境のなかで暮らしています。

■NPOの活躍
メダカ池は、同年に設立された「特定非営利活動法人家根合生態系保全活動センター(以下NPO)」が整備、管理する施設。地域の直営工事となり、設計から構造物の建設、樹木の植栽まで、重機による工事以外は全て地域住民によって施工され、地域に愛される施設となりました。現在も、メダカ池は保全活動の拠点であり、子どもたちの学習の場であり続けています。
子どもたちの請願が実った平成11年から、余目第一小学校とNPOが協力し保全活動を行ってきました。これまでの活動が認められ、平成28年度に環境やまがた大賞、令和元年度に地域環境保全功労者表彰を受賞するなど、高い評価を受けています。
平成18年度より、子どもだけでなく大人の楽しみをつくろうと、メダカ米を使用した純米酒を製造、販売しています。同じくメダカ米の販売も行っており、高い人気を誇っています。

■小学生とメダカ
小学生による活動は1年を通して行われています。同校では、保全活動を学校の年間授業に組み入れ、生態系の調査、観察などを行い、地域との交流を深めています。活動の一部を紹介します。

▽メダカの学習
NPOから講師を招きメダカの生態や種類、生育環境や、メダカ池でメダカを観察し学習。

▽田植え体験
家根合集落にある佐藤さん(NPO前理事長)の田んぼにはだしで入り、手作業で田植えを行う。

▽メダカの放流
田植えをした田んぼにメダカ池のメダカを放流。メダカが棲めるきれいな環境をつくる。

▽メダカの捕獲
田んぼで増えたメダカをメダカ池に引越しさせるため捕獲する。

▽稲刈り体験
子どもたち自身が植えた稲を自ら鎌を持ち収穫。稲は自然乾燥した後、お米となって子どもたちに届けられる。

▽魚の学習会
家根合の揚水機場で様々な魚を捕まえ、種類や生態を学ぶ。

■子どもたちに寄り添って続けていきたい
特定非営利活動法人家根合生態系保全活動センター
理事長 大井庄一さん
前理事長 佐藤昭一さん
佐藤さんはNPO発足当時から理事長を歴任。
令和5年度、大井さんにバトンタッチしました。

当時の子どもたちの想いに動かされ、国や関係機関を挙げて保全活動に取り組んできました。それ以来25年間、1年も欠かさず子どもたちと活動してこれたことは私たちの誇りです。
メダカは繫殖力の強い生き物ですが、環境の変化に弱く、適切な環境でないと数を減らしてしまいます。圃場整備の悪影響にいち早く気づいた子どもたちのおかげで、メダカの命を救うことができました。
メダカを守りたいという発想も、メダカ米を作りたいという気持ちも、子どもたちが主体的に行動を起こしたからこそ始まった活動です。子どもたちがこのような課外活動を行うことで、多くの関心を持ってもらえます。また、子どもたちから活動の感想文をもらえることが私たちの励みになっています。
今の子どもたちは自然と触れ合う機会に縁がありません。地域との交流を通して、魚に触れ、田植えや稲刈りを経験し、庄内町で生まれたことを誇りに思ってほしいです。
小学校の先生や関係機関のご理解、ご協力があり活動を続けることができています。今後も子どもたちに寄り添い、保全活動を続けていきたいです。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU