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自治体の皆さまへ

【特集】地域医療を支えるために(2)

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山形県新庄市

《医療体制の維持と医師の負担軽減》
◇医療機関の適正受診
阿部会長:私は、「私たちとお医者さんを守る最上の会」として、まちを守るという発想の下、地域づくりの活動をしています。我々が安心して生活するためには、衣食住に加えて健康と命が守られていることが必要です。また、その健康を守るためには、病気やけがを治してくださる医療従事者の定着が大切です。
最上地域は全国でも医師の少ない地域です。医師への過重な負担は、医師の減少につながり、その結果、安心してその病院を受診することができなくなると思います。このことから、お医者さんを守ることが、我々住民や自分を守ることにつながると考えこの会をスタートしました。
主な活動としては、適正受診の啓発のクリアファイルを作り、保育園の新入児童の保護者に配布しています。そこには「かかりつけ医をもつ」「正しい知識をもつ」「感染予防しましょう」「迷ったら、まずダイヤル#8000で聞いて、それから受診をしましょう」などの記載をしています。実はこのファイル、病院の領収書や処方箋と同じサイズなんです。
また、保健所が主催する小児救急講座の前座で、啓発活動をしています。このように行政と病院と住民とのトライアングルの協働関係を会の発足以来続けています。
活動して13年目に入りますが、活動が終わることはありません。毎年新しい子どもが生まれ、新しいお母さんが誕生します。そうした人たちに伝えていくため、私たちは活動を続けていきます。

山科市長:病院医師の負担軽減のための働き方改革が叫ばれていますが、新庄病院ではどのような状況でしょうか。

八戸院長:この問題には、全国の病院が直面しています。労働時間の上限が決まっているため、医師が当直をした場合、その分の休みを取らせる必要があります。医師の多い診療科では対応できますが、一人しかいない診療科では対応が難しくなります。当院でも何とか対応している状況です。

◇在宅医療と「看取り」
山科市長:本市では、今後も高齢化が進み、医療・介護が必要な独居高齢者や高齢者のみの世帯の増加が予測されます。そのような状況の中で、在宅での看取りについてはどうお考えですか。

土田会長:高齢化社会という点で、最上地域は全国的にも進行していて、特に若年層が減っています。人生の最期を迎えるにあたり、あらかじめ「最期はこうしたい」と伝えておくことで、家族が安心して対応でき、医療関係者も適切な支援が可能となります。このことが、人口減少地域においては効率化につながるのではないかと考えています。

山科市長:人生の終焉(しゅうえん)期をどう安らかに迎えていただくかということは、地域全体のテーマであると思います。医師の減少や高齢化もある中で、今後そのようなニーズに応えられる仕組みづくりが必要だと考えていますが、いかがでしょうか。

土田会長:訪問診療医を増やすことは、全国的にも課題になっています。そもそも大学では、医学生が訪問診療医を学ぶカリキュラムがないようです。医師になった後に、必要性を感じて訪問診療を行う人が多いと感じています。学生のうちに、こういう姿もあることを知ってもらう機会が増えると、選択肢が広がるのかなと思います。

山田医療監:最上地域は、県内でも最も高齢化が進んでいて、高齢者施設が最も多いにもかかわらず、施設で亡くなっている人が一番少ないのです。この「病院死が一番多い」という実態には大変驚きました。具体的には、最上地域全体で亡くなられる方のうち、約半分を新庄病院で看取っています。その度に医師が呼び出されていて、しかもおよそ3分の1は、真夜中の12時から翌朝6時の間での対応です。その看取りにかかる負担をどのように減らしていくかが課題となっています。
施設にアンケートを取った結果、経験も含めて「不安要素があるから看取りまではできない」という声が多くありました。有事の際には訪問看護師が施設を訪問し、看取りの際にサポートをすることができます。そういう形で支援しつつ、施設でその人らしく静かに亡くなっていただくような形が実現出来たらと思っています。

土田会長:私は特別養護老人ホームの嘱託医になって12年が経ちます。以前は入居施設での看取りはしていませんでした。施設での看取りを提案したところ、現場の方々の経験が少ないことや、「死」に対する恐れなどから、最初は反対されました。しかし、「亡くなる」ということを全職員に説明し、実際に看取りを行ったところ、1年ほどで施設での看取りに応じてくれるようになりました。

山田医療監:住民の意識改革については、医師の皆さんと一緒にやっていきたいと考えています。看取りは法律上、医師が24時間以内に診察すれば、死亡診断書を書くことができます。そうすれば医師の負担軽減につながるとは思いますが、関係者の理解や心の準備がないと進みにくいようです。

八戸院長:私と土田先生は働いている環境は違いますが、年も同じで、考え方もほとんど同じだと思っています。看取り業務の分散化は、本当に医師の負担軽減につながり、みんなが幸せになると考えています。課題としては、嘱託医の裁量と家族の死に対する向き合い方です。「家族が最期をどう受け入れるか」という点が大きなハードルとなっています。

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