《災害時の医療体制》
◇豪雨災害時の対応
山科市長 医療体制の視点から、今回の豪雨災害時には、どのような対応をされましたか。
山田医療監:保健所長は、地域の災害医療コーディネーターのリーダーを担っています。今回の災害では、当初から災害拠点病院である新庄病院と密接に情報交換を行い、避難所へのDMATの派遣を依頼し、保健師がサポートする形で関わりました。最上管内の市町村に勤める保健師の皆さんにも協力体制を組んでいただき、特に被害の大きい戸沢村の支援に回りました。
中でも力を入れて対応したことは、命に関わる透析の患者さんに「どこで、どのように透析を受けていただくか」という調整でした。新庄病院や管内の透析医療機関、さらに難しい場合は他の地域までお願いして調整を行いました。加えて苦慮したことは、避難された方々のほとんどがお薬手帳を持っておらず、自分が何の病気で、どのような治療を受けているのかが分からない状態にあったことです。こうしたリスクを減らすために、携帯電話などでお薬手帳の写真を撮っておくことをおすすめします。また、命に関わることですので、常に薬の予備を携帯しておくなどの啓発も必要だと思います。
◇災害時の医療体制
山科市長:住民や行政だけでなく、医療現場でも大変混乱があったかと思います。新庄病院への搬送や受け入れなどについてはどう対応していますか。
八戸院長:今年の10月に、東北ブロックDMAT受け入れ体制訓練を行いました。災害時には、当院で対応できることには限界がありますので、他地域からのDMATなどによる支援や、被災地外への患者移送が必要となります。今回の訓練を通して、透析患者を搬送するためには、医療機器用の電源や水道水、移動手段の確保などのハードルがあり、行政の協力が必要であることを強く認識したところです。
山科市長:開業医の先生方から、災害時の診療について協力していただくことは可能でしょうか。
土田会長:新庄病院であればDMATとして動く、という協力はあると思います。市の防災訓練で設置される救護所の診療には、医師会が交代で入りました。
山田医療監:東日本大震災のときも、米沢の医師会が体育館で巡回診療を行ってくださいました。大規模災害の際には、医師会の方々に巡回診療をしていただくということがでてきますね。
土田会長:自分の医療機関が被災して診療ができない場合には、巡回診療を行うことは可能ですね。
山科市長:最上地域全体で、災害時の医療体制について取り組まなければならない状況でありますが、課題解決に向けてどんなことが考えられるでしょうか。
山田医療監:実は多くの自治体で、防災担当と医療福祉の担当が、一緒になって計画を作ったり、避難所運営に関するシミレーションをしたりということを実施していないんですね。そこに医師会も入っていただき、具体的な訓練や実践をしていかなければならないと思います。会議でも、できるだけ一緒に話し合うことが大事かと思います。
山科市長:地域が抱える課題は、医療だけではなく、災害対応を含め地域全体で考えなくてはならない状況にあります。この地域を守るための医療体制を構築するべく、行政としてもしっかりと対策を進めてまいります。
今回は「持続可能な地域医療を目指して」をテーマに、地域医療をけん引する方々よりお話をいただきました。私たち市民一人ひとりが、医師不足や高齢化、災害などの課題に向き合うことが、地域の医療を守り、私たちの暮らしやまちを守ることに繋がります。医療の視点から、これからの自分のこと、家族のこと、そして、地域のことをいま一度考えてみましょう。
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