文字サイズ
自治体の皆さまへ

町長歳時記 (201)

1/27

山形県朝日町

■小説はありがたいもの
~「孟嘗君」と「白圭」~

「文どの、人生はたやすいな」
「そうでしょうか」
「そうよ…。人を助ければ、自分が助かる。それだけのことだ。わしは文どのを助けたおかげで、こういう生き方ができた。礼をいわねばならぬ」
「文こそ、父上に、その数十倍の礼を申さねばなりません」
「いや、そうではない。助けてくれた人に礼をいうより、助けてあげた人に礼をいうものだ。文どのにいいたかったのは、それよ」
これは、宮城谷昌光著「孟嘗君~第5巻~」に出てきた、「文」と呼ばれた孟嘗君(もうしょうくん)と死の床にある育ての父白圭(はくけい)とのいまわの際での会話であります。
私たちは一般に、「助けてくれた人に礼を言う」と考えるのが、普通であります。しかしここでは、養父たる白圭が、孟嘗君である養子「文」に、「助けてあげた人に礼をいうものだ」と諭しています。
なかなか分かったようで分からない。これは一生掛けて会得するものなのかと思っています。
また「長生きこそ人生の宝だ」と言って息を引き取った白圭の言を受け、後年孟嘗君が語った臣下の公孫戍(こうそんじゅ)との会話も深く考えさせられます。
「戍よ、長生きせよ。人が生きることはたいへんなことだ。そのたいへんさがわかって生きることは貴い」
「人のいのちは、すでにあるものを守ってゆくというようなものではない。日々つくってゆくものだ。今日つくったいのちも明日にはこわれる。それゆえ、いのちは日々産みだすものであろう」
「長生きとは、長い生産になりますか」
「今日よりましな自分を明日に画(か)いて今日を生きる。それしかあるまい」
小説はいろんな示唆を私に与えてくれる。ありがたいものです。

朝日町長 鈴木浩幸

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU