■誰もが自分らしく生きられる地域へ
皆さんは「認知症」をどのように捉えていますか。「何も分からなくなり、できることがなくなる」と捉えられることも少なくありませんが、全て忘れるわけではなく、できることもちゃんとあります。
今回の特集では、認知症にかかった人と関わる際に大切にしてほしいことや、町で取り組んでいるサポート事業などを紹介します。
【認知症って、どんな病気?】
◆さまざまな種類がある認知症
認知症は65歳以上で発症することが多く、発症者数も全国的に増加しています。さまざまな種類がある中で、代表的なものが「アルツハイマー型認知症」。脳の細胞が少しずつ壊れ、物忘れや判断力の低下などが穏やかに進行します。
また、前記のほか幻視や意欲の低下などの症状が現れる認知症もあります。
◆老化の「物忘れ」との違い
老化による物忘れは、出来事の一部を忘れるものの、ヒントを得ると思い出すことができ物忘れを自覚しています。認知症による記憶障がいは、物忘れ自体を自覚していないことが老化による物忘れとの大きな違いです。
◆変化する捉え方
認知症の捉え方は年々変化しています。令和6年1月には、誰しもが認知症を“自分事”と捉える地域社会を構築するための法律が制定されました。認知症の人もそうでない人も、生き生きと暮らせるような地域づくりが進められています。
○オレンジリング
「認知症の人を応援します」という意思を示すものとしてサポーターに配付されます。サポーターは近所で気になることがあればさりげなく見守る、まちなかで困っている人がいたら手助けするなど、自分のできる範囲で活動しています。
◆環境で変わる「行動・心理症状」
物忘れや物事の段取りができないなどの「中核症状」は認知症本来の症状であり、治療によって進行を遅らせられる場合があります。
一方で、妄想や幻視、物事への興味・関心が薄れるなどの「行動・心理症状」は、本人の性格や周囲の環境で変わり、症状が現れない場合もあります。
○認知症にかかった本人の気持ち
・できないことも増えるが、できることもあることを知ってほしい
・できないことの中で困ることは「新しい場所に一人で行けないこと」、「時間の感覚がないこと」
・「何も分からない人」と考えないでほしい
→厚生労働省公式ホームページでは、認知症の人からのメッセージをご覧いただけます
◆主な行動・心理症状
中核症状をもとに本人の性格や周囲の環境、人間関係などさまざまな要因が関係して現れる症状
・夜眠れなくなり昼夜が逆転する
・興味、関心が低下する
・大声をあげたり暴力をふるう
・外へ出ていきそのまま家に戻れなくなる
・別人のように短気な性格に変わる
・物が盗まれたと思い込む
・便を擦り付ける
・汚れた下着をそのままにする
・見えないものが見える
○中核症状
脳の細胞が壊れることによって起こる、認知症本来の症状
・新しいことが覚えられない
・考えるスピードが遅くなる
・同じことを何度も言う/聞く
・数分前にしていたことを思い出せない
・ものごとの段取りが立てられない
・日にちや時間、家族の顔が分からなくなる
◆大切にしてほしい心がけ
・いつもと何か様子が違うと思ったら、かかりつけ医や地域包括支援センターなどにご相談を
・できないことや間違いがあっても否定しないようにしましょう
・火の不始末や道に迷うことなどに備えて、対策を考えておきましょう
・一人で抱え込まず、身近な人に理解してもらったり介護サービスや医療サービスを活用しましょう
・食事、排泄などの支援が必要になり、合併症が起きやすいことを理解しましょう
一人で抱え込まないで、みんなで協力
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