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ふれあい×やまなし in depth(1)

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山梨県

■めざせ、郷土を支えるアーキテクト!県内初の一級建築士認定校が誕生
夢のような条件で一級建築士を目指せる「県立甲府工業高等学校専攻科建築科夜間制」。
そこに通う生徒がこの学校に入学した背景やその思いについて、やまなしin depthからダイジェスト版でお届けします。

「未経験者歓迎」
「高校既卒者・見込みなら年齢不問」
「授業料は月額9900円」
「日中、仕事OK!」
こんな、夢のような条件で、一級建築士を目指せる学校がある。
山梨県立甲府工業高等学校の専攻科建築科の夜間制だ。

◇たくさんの夢が集まる夜間高校
「お給料がよくて、自宅から近い職場ならいい」
ずっと、そんなふうに思っていた。
だから、これまでもホテルのフロントや、スポーツジムのインストラクターなど、さまざまな職を渡り歩いてきた。「建築」に携わるまでは――。
「昔から、ものづくりが好きだった」と話すのは、「株式会社夢や」の大河内良枝さん。2022年10月、住宅の新築やリフォームを手がける夢やに入社し、建物の設計や外観デザイン、水回りの改修提案などの業務に携わっている。
「現在の会社に勤めるまで、いろんな職種に携わってきました。もう、30代ですし、『本当は何の仕事がしたいのか?』と悩んで、ハローワークに相談したんです。面談シートで『ファッション』など興味のある分野にチェックを入れていくのですが、そのとき、ふと『建築』というワードが浮かび上がって見えたんです」
相談員に「建築関係なら、職業訓練がありますよ」と後押しされ、大河内さんは山梨職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)に通い始めた。
ポリテクセンターでの日々は、充実していた。設計を行うソフト「CAD」の操作は楽しかったし、間取りを考えながら、そこに住む家族が団らんしている姿を想像するだけで、時間はあっという間に過ぎた。
「そんな職業訓練中に、山梨県立甲府工業高等学校の専攻科建築科の卒業生と知り合ったんです」
ポリテクセンターでの職業訓練中に夢やの面接を受けた。その際、日中は夢やで仕事をし、退勤後は甲府工業高等学校の専攻科建築科夜間制に通いたいこと、建築について、いま以上に勉強したいという思いを伝えた。
夢やの社長からの返事は「ぜひ、頑張って」。採用の返事と共に、激励をもらった。
「16時半まで働いて、夢やのある甲州市から甲府市の学校へ行って、17時からの給食を食べて、18時5分から授業が始まります。授業は21時20分まで。毎日忙しくて、だらだらできる時間はまったくありません。でも、学校には私より若くて、優秀な方もいます。私と同じように、別業種から建築を志す人もいます。一人だとめげそうになるけれど、同じ夢を持つ仲間に出会えて、刺激をもらえて、毎日が充実しています」

◇学生の県外流出を食い止めろ
これまで、山梨県内では一級建築士の受験資格を得られる学校がなかった。対応している学校がないのは、全国47都道府県の中でも二つだけで、そのうちの一つが山梨県だった。甲府工業高等学校建築科主任の菅沼雄介さんはこう語る。
「高校を卒業後、一級建築士の勉強をしたいと思う人は、みんな県外の学校へ進学していました。そして、そのまま就職し、居を構え、生活基盤を他の都道府県で持ってしまうのが長年の課題だったんです。一度、外へ出てしまった人は、なかなか戻ってきてくれません。高い志を持った人間を、地域の中で育成して供給できるような、そんな体制づくりが必要でした」
従来も、山梨県内で二級建築士の受験資格取得は可能だった。しかし、一級建築士に比べると、二級建築士は、設計できる建物の規模などに制限がある。二級建築士は家屋、施工監理が主な業務対象だが、一級建築士はビルや公共施設など大型建築にも携われる。
建築に関わる者にとって、両者の違いは大きく、より高い目標を掲げる人が県外へ流出しがちだった。
「県内の企業や業界団体からも『なんとかならないか』という声が寄せられていました。そこで、22年度のチャレンジとして、当校のカリキュラムを再編し、一級建築士の認定校になるための手続きを行ったんです。建築士法改正によって、20年からは一級建築士の受験資格に必要だった『実務経験』も不問となり、条件が緩和されていたことも追い風になりました」
手続きからおよそ半年後の、22年12月、認定が下り、甲府工業高等学校の専攻科建築科は山梨県初の一級建築士の認定校となった。
「これから建築士を目指す人より、すでに建築業に携わっている方からの反響が大きいですね。『2年制で一級建築士が受験できるなんてすごいね』『公立で学べるとは、お得だね』など、いろんな声をいただいています。建築を学ぼうとした際、一般的に、専門学校では2年間でおよそ250万円を要します。でも、当校の場合、月額9900円、諸経費を入れてもかかる費用は2年間で40万円です。Iターンや、セカンドキャリアを考えている都心部の方にも有効に活用していただければ」

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