■P2Gの量産工場が都留市にやってくる
世界中で脱炭素の動きが進む中、水素エネルギーへの関心が高まっています。燃料として使っても二酸化炭素を発生せず、地球温暖化の元凶ともいわれる化石燃料からの脱却につながるからです。
山梨県は、カーボンニュートラルのトップランナーとして、日本をリードし続けてきました。そして2024年、水素をつくる装置の量産工場が県内に新たに建設されることが発表されました。
充実した研究環境に「量産」というパーツが加わり、山梨県は、水素先進地としてさらに前進します。
◆カナデビア新工場、28年度にも操業へ
国内で水素製造装置を手がけるカナデビア(旧日立造船、本社・大阪市)が、都留市に新しい工場をつくることを発表しました。カナデビアは機械・工場設備のメーカーで、約80億円を投じて新工場を建設し、28年度中の操業を目指すとしています。
新しい工場でつくられるのは、水を電気分解して水素を製造する水電解装置の中核機器で、「水電解スタック」と呼ばれる機器です。カナデビアは都留市の新工場を〝国内マザー工場〞と位置づけ、水電解スタックを量産し、水素製造拠点を国内外に順次展開していく考えです。
◇P2Gシステムの普及を後押し
山梨県はこれまで、水素を製造して実際に工場などで使えるようにするため、全国をリードして研究開発を進めてきました。県が開発した水素製造装置「P2Gシステム」は、サントリー白州工場(北杜市)などで導入の準備が始まっています(本紙P11に詳細)。
産業界の関心も高く、水素の製造・研究開発拠点でもある米倉山(甲府市)の施設には、NTTドコモや東レなど多くの企業が入居し、国内企業や外国からの視察も絶えません。
しかし、水素エネルギーは、なかなか普及が進んでいません。従来の燃料より値段が高いことが大きな原因です。
量産によって水素をつくる装置の価格が下がれば、水素製造コストの削減につながります。カナデビアの新工場は、日本の水素社会実現をけん引するシンボルになるのです。
県が開発した水素製造装置「P2Gシステム」にも、同社の機器(スタック)が使われています。スタックが安くつくれるようになれば、P2Gシステム自体のコストも安くなり、山梨発の技術が全国に普及していく可能性が高まります。
P2Gシステムが普及すればするほど、水素エネルギーのコストが下がるという好循環が生まれます。この結果、「暮らしの中で水素が使われる」社会が現実のものになるわけです。
やまなしP2Gシステムが世界に広まり、山梨はグリーン水素の代名詞となります。
◇県内経済に好影響及ぼす〝水素効果〞
水素先進地であることは、県内経済にも好影響が期待できます。
水素に関連した企業がいま、山梨に集まり始めています。企業が県内に拠点を置けば、新しい〝働く場〞ができます。山梨にUターンして働く人が増えるでしょう。県内大学生にとっては魅力的な〝就職先〞になります。
県内企業との新たな取引も始まるでしょう。今は水素と関係ない企業が水素関連分野へ参入する機運が高まり、安定的な収益アップ効果も出てくる可能性があります。
カナデビアの工場誘致にあたり、長崎幸太郎知事は23年10月、カナデビア東京本社を訪ね、立地条件の良さなどをアピールしました。さらに、24年2月、堀内富久・都留市長とともに候補地を案内するなどトップセールスを重ねた結果、都留市への立地が決まりました。
長崎知事はカナデビア新工場について、「研究環境が整った本県に〝量産〞という新たなピースが加わります。それによって、〝実証〞が〝実装〞へと移行するスピードが加速していきます」と述べ、全面的な支援を表明しました。
※詳しくは、本紙またはPDF版を参照してください。
問い合わせ先:
・(P2G)新エネルギーシステム推進課【電話】055-234-5268【FAX】055-267-5318
・(企業立地)成長産業推進課【電話】055-223-1565【FAX】055-223-1569
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