◇グランド・ビジョン
ー県内に富士トラム網を張り巡らせるー
リニア駅とスバルライン五合目。これら2地点をなぜ直結することができるのでしょうか。それは、富士トラムに導入する車両が、ゴムタイヤで走るからです。鉄レールを新たに敷設する必要がなく、既存の一般道を走ることができるので延伸が容易です。
県は、将来的に富士トラムを県内各地に延伸することも視野に入れています。実現したときの「グランド・ビジョン」も描きました。リニア・中央本線・身延線といった鉄道に加え、中央道・中部横断道・新山梨環状道路などの主要道路のはざまに「富士トラム網」を張り巡らせていく計画です。
リニア開業というチャンスを県民の暮らし向上や、地域経済の活性化にダイレクトに結び付けていくこと。これこそが、「富士トラム」を核としたグランド・ビジョンの最も重要なポイントです。
名古屋圏や関西圏から富士山や県内へのアクセスが良くなるので、リニア駅の利用者は格段に増えるはずです。それにより、「リニア駅の停車本数を増やす効果」が期待できます。
これまで新幹線駅が設置されたものの、その駅に停車する列車が少なく、単なる〝通過駅〞となってしまって地域の活性化に生かされないケースがありました。
山梨県でそのような状態を生み出してはいけません。
リニアと富士山がつながることで利便性が向上し、リニア駅の乗降客数が増えれば、単なる〝通過駅〞にはならず、停車本数の増加が見込めます。
そして、トラムが県内各地とリニア駅を結ぶことで、リニア駅周辺の開発が促され、JR甲府駅一帯をはじめ各地の観光・交流や産業振興もさらに進むことが期待できます。富士山の恵みを全県へ行き渡らせることができるのです。冒頭に描いた「やまなしの未来予想図」のように、県民の皆さんは、家の近くにできたトラム駅から乗ればリニア駅に行けます。そして、リニアに25分乗れば東京に、45分で名古屋に着きます。県民の皆さんにとって、リニアが普段使いできる手軽な交通手段になります。
リニアによる東京へのルートができることは県民の普段の暮らしやビジネスにも影響します。東京が通勤・通学圏内になるからです。東京に転勤になっても引っ越しをせずに済みます。東京に本社を置く会社が山梨へ移転してくるケースも出てくるでしょうし、大都市圏で働いている人たちが、暮らしや子育て環境が整っている山梨へ移り住む動きも加速することが期待できます。
こうした変化が、人口減少対策にも好影響を与えるはずです。
これまで県内を訪れる観光客は、富士山観光がメインだったかもしれません。しかし、県内には他に幾つもの観光名所があります。リニアを経由して山梨県内のトラム周遊が実現することで、観光客は、富士山の行き帰りに石和温泉に寄ったり、笛吹川フルーツ公園で旬の果物を楽しんだりすることも簡単にできるようになります。
このように、県内の観光地が活性化していくことは、地域経済にも好影響を与えると考えています。
県は、富士北麓地域で「富士五湖自然首都圏構想」を進めています。最新のアートや、水素などの先端技術を生かして「世界に類を見ない先進的地域」を創る構想です。トラムでつながった富士北麓地域は、世界中の人々がリニア駅を経由して集まり、交流を深める拠点になります。
リニア駅を起点に、県内各地をつなぐ富士トラムが「新しい山梨県のカタチ」を創り上げていくことにつながるでしょう。
※富士トラム網を核としたグランド・ビジョンについては、本紙またはPDF版を参照してください。
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