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世界文化遺産登録10周年!富士山の普遍的価値を未来へ(1)

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山梨県

日本の象徴である富士山。広くなだらかな裾野を有する独立峰は、どこから眺めても整った姿を見せてくれます。併せて、季節や時間、気象条件などによってさまざまな表情も持ち、今もなお多くの人々を魅了し続けています。
この美しい富士山が世界文化遺産に登録されてから今年で10年を迎えました。世界に認められた富士山の価値を未来へと引き継ぐため、県は今後も関係者と協力して保全のための取り組みを進めていきます。

◇世界に認められた日本一の山
標高3776メートル、日本で最も高い山、富士山。しかし、ただ標高が高いだけではありません。雄大な姿と頻繁に繰り返された噴火によって、古くから多くの人が畏敬の念を抱き、やがて「信仰の対象」となっていきました。また、溶岩などの噴出物で少しずつ裾野を広げることでつくられた美しい円すい形の姿は、国内外の芸術家の創作意欲をかき立て、さまざまな作品を生み出す「芸術の源泉」として大きな影響を与えてきました。人と自然が、信仰と芸術を通して共生する姿は、富士山が持つ大きな特徴といえます。
ユネスコ世界遺産委員会はこうした文化的な価値を認め、世界遺産の登録を決定しました。私たち日本人にとって大切な富士山は、世界が守るべきかけがえのない宝となったのです。

◇順風満帆ではなかった登録までの道のり
富士山が世界遺産登録に至るまでにはいくつものハードルがありました。
平成4年に「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」が国会で批准されると、自然保護グループらで構成される団体が、富士山の世界自然遺産登録を目指した運動を開始。山梨県においても、静岡県と共に、富士山を後世に引き継いでいく決意を示した「富士山憲章」を定め、世界遺産登録への動きを加速していきました。

〔富士山憲章〕
一 富士山の自然を学び、親しみ、豊かな恵みに感謝しよう。
一 富士山の美しい自然を大切に守り、豊かな文化を育もう。
一 富士山の自然環境への負荷を減らし、人との共生を図ろう。
一 富士山の環境保全のために、一人ひとりが積極的に行動しよう。
一 富士山の自然、景観、歴史・文化を後世に末永く継承しよう。

官民一体となった活動が実を結び、平成15年には国の諮問機関「世界遺産条約特別委員会」が世界自然遺産の候補17地域の中に富士山を選定しました。ところが、国の検討会で選考した結果、最終候補地から落選。ごみの投棄やし尿の垂れ流し、山麓部での開発などが壁となった可能性が指摘されました。
その2年後、今度は文化遺産での登録を目指して再始動。信仰と芸術の価値を前面に訴えることに。課題とされてきた環境問題は、関係団体や住民との清掃活動の実施や、登山者へのごみの持ち帰りの呼び掛け、環境配慮型トイレの計画的な整備などの対策を進めました。麓の開発は、地元関係者と意見交換を重ね、文化財保護法による区域指定を受けることで厳格な土地利用の規制を導入することとしました。こうした間にも、ユネスコの審査が年々厳しくなり、国内の遺産候補の中で登録延期の決定が下された事例も出てきたことから、県は、登録を成功させるため慎重に慎重を重ねて作業を進めていきました。
そして、再挑戦から8年目の平成25年、度重なる登録目標時期の延期や数々の課題を乗り越え、ついに悲願の世界遺産登録が現実のものとなりました。国内の他の世界遺産に比べ異例のスピード登録であったともいわれています。

◇より良い保全のために
ユネスコは、世界遺産登録の決定に当たり、富士山保全の取り組みをさらに改善するための指摘・勧告を行いました。
その内容は、建築物の規制強化に関するもののほか
(1)資産の全体構想を策定すること
(2)下方斜面の巡礼路を特定すること
(3)上方登山道の収容力を研究し来訪者管理戦略を策定すること
(4)上方登山道の保全手法を定めること
(5)来訪者に対する情報提供戦略を策定すること
(6)経過観察指標を拡充強化すること
―です。
これを受けて県は、構成資産と緩衝地帯に対する開発制御や景観保全をするための条例を制定したほか、富士山に関する情報発信や保存管理の中心的な役割を担う「富士山世界遺産センター」の設置、静岡県との協力による上方登山道の収容力の研究と適正な登山者数にすることを目指した対策など、あらゆる取り組みを実施してきました。

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