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自治体の皆さまへ

世界文化遺産登録10周年!富士山の普遍的価値を未来へ(2)

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山梨県

■今もなお続く富士山への不法投棄
◇環境面の改善は進んだが…
世界遺産登録に向けた取り組みを進める中で、富士山の価値への理解や保全の対策も大きく前進しました。
民間団体による清掃活動が実施されるようになり、登山者などへごみの持ち帰りを粘り強く呼び掛けてきたことで、富士山のごみを減らし、新たなごみを増やさない意識が浸透していきました。
また、山小屋などへの環境配慮型トイレの整備が完了し、かつての浸透放流式トイレから垂れ流される汚物やトイレットペーパーによってできていた「白い川」と呼ばれる現象は今では見られなくなりました。
このように、世界の宝である富士山の環境は、近年、劇的に改善しました―。
と断言したいところですが、実は、いまだにごみの投棄は続いているのです。
右下の写真は、二つとも今年の4月に撮影されたものです。ごみの状態から、最近捨てられたものであることが容易に想像できます。
さらに、山麓の林の中など人目につかない場所だけでなく、山頂付近の登山道でもさまざまなごみが捨てられています。食料品の袋、手袋、タオルなどのほか、尿が入った袋・ペットボトルや、便とティッシュペーパーがそのまま放置されていることもあります。

◇捨てるのも拾うのも同じ人間
不法投棄の未然防止や早期発見、拡大防止のため、監視員による巡回や監視カメラの設置などの対策を講じています。発生してしまったごみは、民間団体やボランティアの協力も得ながら回収を続けています。
しかし、捨てる人がいなければ、本来は拾う必要のないごみ。
ごみを捨てない、捨てさせないとの意識を醸成するため、県はさまざまな機会を通じて不法投棄の現状を伝え、美しい富士山を後世に残すために活動する人々の姿を紹介しています。また、富士山レンジャーによる巡回・監視や学校、企業・団体を対象とした環境教育も実施しています。こうした活動をさらに推進していきます。

■オーバーツーリズムは富士山にも
◇大量に押し寄せる車、バス、人
富士山はもともと観光地としての魅力が高く、多くの登山者、観光客が訪れていました。世界遺産登録に向けて注目が高まる中、国内外から訪れる人で以前にも増して賑わいを見せるようになり、登山道や山小屋の混雑、富士スバルラインの渋滞は一層深刻なものとなりました。観光地が持つ受け入れ能力以上に観光客が押し寄せる「オーバーツーリズム」といわれる現象が富士山にも起こっていたのです。
オーバーツーリズムにより、自動車の排気ガスによる環境負荷や、多くの登山客の踏圧による登山道の劣化など、さまざまな影響が懸念されています。また、混雑によって自分のペースで登山できなかったり、山小屋で休憩や宿泊ができなかったりする登山者が生じます。
富士山が持つ資源の価値を下げ、登山する人々の満足度を上げられない今の状況のままでは、いずれ富士山の観光は衰退の一途をたどることになってしまいます。

◇コロナ禍後のこれからが正念場
新型コロナウイルス感染症のまん延以降、社会情勢の変化とともに、観光を取り巻く環境も大きく変わりました。ソーシャルディスタンスを確保するための施設内配置などの感染防止対策は、コロナ禍後もゆとりのある環境で上質な時間を過ごしたい人々の大きなニーズとなってきています。
山小屋も就寝スペースを板やカーテンで仕切り、収容人数を制限するようになりました。以前のように大勢の人が雑魚寝する窮屈な施設を求める人はいないでしょう。
昨年は新型コロナの影響を受け、富士吉田口登山道の登山者数はかつての最盛期の水準まで回復しませんでした。感染症法の位置付けが5類となって初めての登山シーズンを迎える今年は、開山期間中の山小屋の宿泊予約がほぼ埋まり、海外からの予約が3割近くを占めるという声も聞かれています。こうした状況の中、富士山の環境や資源を保全するために来訪者数をどのように適正にしていくのか、また、登山者など観光客の満足度をどのように上げるのか、早急な対策が必要となってきます。
県は平成28年から3年間、どれくらいの登山者が同時に入山できるかを調査・研究し「望ましい富士登山の在り方」やこれを実現するための指標を定めました。
この指標を実現するため、混雑予想などの情報提供を通じて登山者の分散を促したり、構成資産を巡るモデルコースの設定・周知により山麓への周遊を促進したりするなどの対策を実施しています。
富士山への来訪者数を適正化し、富士山の保全と、満足度の高い登山環境を整えることなどにより、持続可能な富士山観光を実現していきます。

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