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世界文化遺産登録10周年!富士山の普遍的価値を未来へ(4)

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山梨県

◇励まされ、前を向ける
小田:私の考える富士山の価値。それは、例えば人生の岐路に立った時や辛い時に富士山を見ると心が落ち着き、よし、やろうと前を向ける。富士山を通して自分の人生と向き合うことができる、これが大きな価値だと思います。
日本では自然界の中に神が宿るという考えから宗教が形作られ、山岳信仰も生まれました。富士山を見ると人は手を合わせたくなります。やはり富士山という自然物に「神聖」なものを見ているのだと思います。
近藤さんにとって富士山はどのような存在ですか。
近藤:そうですね、僕はいつも「両親のような存在です」と答えています。いつも看ていてくれて、そして励ましてくれる懐の深い大きな存在です。麓を歩くだけでも、遠くから眺めるだけでも、富士山のものすごいパワーを感じることができます。
また、富士講の時代から、人々は富士山と向き合い、自らの人生と重ね合わせてきました。それが脈々と受け継がれてきた歴史も素晴らしいと思います。

◇次世代へつないでいくために
小田:一方で、富士山にはさまざまな課題もあります。価値を次世代へ守りつないでいくため、神聖な山である富士山にふさわしい環境の整備が必要だと思います。例えば五合目のごみ問題、発電機の騒音、臭いなども解決しなければなりません。
富士山の自然や文化を守っていくためには、今の状態のまま手を加えないのではなく、しっかりしたコンセプトのもと適切な整備をし、本来の価値を感じられる場所に戻していくことが必要ですね。
近藤:他には、オーバーツーリズムも課題ですね。現在の富士山は、昼前に五合目に集まり、早朝には頂上で御来光を見るといったツアーが組まれることが多く、特定の場所・時間帯に人が集中しています。僕は曜日や時間などを工夫して「ずらし登山」を実践してきました。混雑時間帯を避けることで、お客様の感動度が高まります。また、前泊・後泊を促すことで、宿泊施設や観光施設を巡ることになり、地域への還元にもなると考えます。
アクセス方法やツアーのつくり方で来訪者の分散を促すなど、本来の富士山の価値を体感してもらうためには、受け入れる側の姿勢も大切だと思います。

◇次の10年に向けて
小田:これからの富士山のあるべき姿として、私は富士山を平和のシンボルにしたいと思っています。宗教も、西洋・東洋も関係なく、みんなが世界平和の祈りを捧げていくような場所に成り得ると思います。「一人一人が自分と出会い、みんなが平和を願う」。そこに富士山の神髄があると私は考えます。
近藤:時代とともに富士山との関わり方も変わりますから、価値を受け継いでいくためには、それに応じた人材を育てていくことが大切です。そのためにはたくさんの子どもに富士山のリアルな体験をしてほしい。富士山は日々投げかけてくるものが違うので、それを若者にキャッチしてもらいたいです。そして住んでいる人も、訪れた人もみんなが幸せを感じられるような「感幸(かんこう)」を目指していきたいです。

問い合わせ先:世界遺産富士山課
【電話】055-223-1316【FAX】055-223-1438

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