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自治体の皆さまへ

世界文化遺産登録10周年!富士山の普遍的価値を未来へ(5)

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山梨県

■世界に類を見ない先進的な富士五湖地域へ
富士山の世界遺産登録の際、ユネスコから環境と観光の両立など解決すべき多くの宿題が出され、県は地域と協力しながら一つ一つの課題に取り組んできました。しかし、オーバーツーリズムや環境負荷など、いまだ多くの課題が残されています。この問題を根本的に解決し、上質で先進的な地域をつくるため、富士五湖地域では、持続可能な観光・地域の在り方を県内外の人や企業・組織が共に考え実行していく新たな取り組みが始まっています。

◇自然首都圏に向けて
富士山の麓に、国内最高の観光リゾート地と最先端の首都圏機能を融合させた、世界に類を見ない先進的地域「自然首都圏」を創出しようと、県は昨年、富士五湖自然首都圏フォーラムを立ち上げました。フォーラムでは、芸術の街(アートシティ)の推進や環境に優しい次世代交通(グリーンモビリティ)の普及、学問・芸術・文化・スポーツの中心地(アカデメイア)の促進などをテーマに5つのワーキンググループ(WG)を立ち上げ、地域住民や参画企業・組織と共に、議論を重ねています。このうち、アートシティの推進に向けた具体的な取り組みが始まっています。

◇動き出したアートシティへの道
江戸時代、歌川広重や葛飾北斎をはじめ多くの画家に描かれてきた富士山。これらの絵画は海を渡り、ゴッホなど、当時のヨーロッパの画家たちに強いインパクトを与えました。それから100年以上経過した現在、富士山の麓に広がる富士五湖地域は最高の芸術や音楽を楽しめるアートシティに進化しようとしています。
4月、日本の芸術界の中心的な役割を担う公益社団法人日展が、このフォーラムに参画しました。日展は富士五湖地域の美術館やホテルと連携したアート作品の展示会等、多様な発表の場を設けることで、若手アーティストの育成などに取り組んでいきます。日展の参画によって、富士山の麓には日本中からアーティストが集まり、素晴らしい作品が次々と世界に発信されていくでしょう。そして、住民は日常的に優れた芸術に触れ、日々の生活に彩りが加わることでしょう。
富士山が持つ芸術の源泉としての価値を後世に受け継ぎ、いつまでも芸術家に愛される地域となることを目指し、取り組んでいきます。

◇イコモスが鳴らす警鐘
富士五湖自然首都圏フォーラムでは、環境に配慮した次世代交通についても検討を始めています。山梨県側の富士山五合目は、電気も水も引かれておらず、観光客の増加により自動車や自家発電機の排気ガスなどによる環境負荷がますます大きくなっています。また、信仰の山にふさわしい景観づくりも進んでいません。このままでは多くの方が期待するような富士山とは懸け離れる一方です。世界遺産登録の際にユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)からも、来訪者管理、環境保全、景観保全について改善を要請されており、地元自治体の責任として解決していかなければなりません。
こうした中、課題を一挙に解決に導く方法の一つとして検討を進めているのが「富士山登山鉄道構想」です。
今ある道路の上にレールを敷き、次世代型の路面電車(LRT)を走らせ、来訪者を五合目まで運びます。電気で走るため、排気ガスは出ません。LRT導入と同時にルートに沿って電気や上下水道などのインフラを整備すれば、五合目の自家発電による排気ガスの問題も解決でき、環境負荷が軽減されます。道路の渋滞はなくなり、まるでヨーロッパにある山岳鉄道のように、美しい景観も保てることでしょう。また、登山鉄道は来訪者数を適正に保つとともに、年間を通して運行することで、富士山の四季の魅力を堪能できることから、来訪者の満足度向上も期待できます。

◇構想をより具体的に
かつて何度も提唱されてきた富士山登山鉄道ですが、どれも具体性に欠け、実現には至りませんでした。
そこで県では、まず国内の有識者による検討会を開催し、LRT導入が富士山の環境保全に有効であり、安全性や快適性などの点で最も優れた交通手段であるとの結論に至りました。今後は、関係する自治体や地域住民の皆さん、富士山で働く皆さんとしっかりと議論を重ねていきます。
持続可能な富士山・富士五湖地域を実現するためにどうすべきなのか、皆さんも一緒に考えていきましょう。

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