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ふれあい×やまなしin depth(1)

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山梨県

■「町の当たり前」もユニークな「ハレとケ」に 危機に瀕する祭りの口伝を次世代に残したい
言い伝えとなっている地域の歴史や無形文化を図書館が主体となり保存する「山梨ふるさと記憶遺産プロジェクト」。
その背景や現状について、やまなしin depthからダイジェスト版でお届けします。

消えゆく歴史と文化を残そうと、山梨県は「山梨ふるさと記憶遺産プロジェクト」を始め、2023年3月、2つの冊子が出来上がった。その一つ、市川三郷町のテーマは「祭り」。
町の当たり前は外の世界からみると極めてユニークだった。
いつも〝そこにある日常〞に光が当たるまでのストーリーを追った。

◇消えゆく語り部
山梨県の各地域には無名の先人たちが数多の困難を乗り越えて築きあげてきたストーリーがある。しかし、少子高齢化が進みコロナ禍による社会の変化が進む中、語り部は次第に姿を消し、口伝は歴史の中に埋もれてゆく。
このままでいいのか――。2021年6月定例県議会で話題になった。
宮本秀憲県議:オンライン化が進み、図書館に行かなくてもスマホでさまざまな情報を入手できる時代になった。しかし、言い伝えとなっている地域独自の歴史、無形文化など(は形にして残さなければ途絶えてしまう。これら)を地域の図書館が主体となって保存すべきではないか。その図書館を訪れなければ知り得ないことがあれば、地域の図書館の付加価値を高めることになるのではないか。
長崎知事:県内各地に伝わる記憶を後世に引き継ぐことは極めて重要だ。地域固有の文化と歴史を記録・発信・継承する拠点の機能を地域図書館が担うということは、十分に検討に値する。
さらに知事は答弁を続けた。
「継承されるべき地域の文化と歴史は、正史としての郷土史にとどまらず、地域の多様な方々の体験やストーリーといった〝ふるさとの記憶〞を収集したものであればと考える」
この知事答弁をきっかけに、「山梨ふるさと記憶遺産プロジェクト」が2022年に始まった。目的は「県内各地の歴史や文化、人々の体験、先人たちの記憶や物語などを記録・収集し、保存し活用していくため」だ。
プロジェクトを進めるため、生涯学習課は2022年の2月、県内市町村に向けてプロジェクトを説明し、「記憶遺産」への協力を求めた。すぐに市川三郷町が名乗り出て、プロジェクトは順調に始まるかに見えたのだが――。

◇「祭りはどうでしょうか?」
2022年8月、市川三郷町生涯学習センターの会議室で、県庁職員と町職員ら8人の男女が頭を抱えていた。
記憶遺産プロジェクトで扱うべきテーマがどうにもしっくりこないからだった。というのも、当初町から出されたアイデアは、伝統産業の花火、印鑑、大塚人参。
どの案も産業に傾きがちで、知事が言う「地域の多様な方々の体験やストーリーといった〝ふるさとの記憶〞」と言えるだろうか…。
口数が少なくなった会議室で、生涯学習課の課長補佐である伊藤伸二さんが発言した。
「祭りはどうでしょうか?」
地元の旧市川大門町出身の伊藤さんはさらに続けた。
「市川三郷町にはたくさんの祭りがあります。それこそ口伝でしか残っていないものもあります。地元の人たちは知っていても、多くの県民は知らないのではないでしょうか」
祭りの中にはコロナ禍で中止になり、そのまま途絶えてしまいそうなものもあった。だから、いま「記憶遺産」として取り上げるのは、タイミングとしても悪くない。だが、市川三郷町立図書館の小林可苗さんは「自分の一存では決められない」と答えて、いったん町に持ち帰って検討することになった。

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