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みなさんの健康

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山梨県中央市

◆正しい服薬の先にあるより良い未来を目指しましょう
山梨大学医学部附属病院 薬剤部 薬剤師 内藤沙紀

「心不全」という病気を知っていますか?聞いたことはあるけれど、よく分からないという人も多いのではないでしょうか。実は患者数も非常に増えており、みなさんが想像する以上に身近になってきている病気です。今回は心不全にまつわる薬物治療についてお話します。

■心不全とは
「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義されています。つまり、心不全とは一つの「病気」を示しているのではなく、血液を全身に送るためのポンプ機能が低下した「状態」を示すことばです。心不全の予後は、実はがんとあまり変わりません。心不全を発症すると完治は難しく、悪化と改善を繰り返しながら心臓の機能と生活の質(QOL)が低下していきます。これを防ぐためには、日々の生活習慣に気をつけて、急激な悪化を予防していくことが大切です。

■心不全ステージと薬物治療
心不全は進行度合いに応じて次の4つの段階に分けられています。
ステージA:心臓病につながるリスク因子はあるが心臓病はなく、心不全症状もない状態
ステージB:リスク因子および心臓病があるが、心不全症状はない状態
ステージC:心不全症状がある状態
ステージD:入退院を繰り返し、強い心不全症状が持続する状態
「ステージA・B」は心不全の症状はありませんが、リスク因子を有している状態です。最も代表的なリスク因子に「高血圧」があります。血圧は510mmHg低下させると、心不全のリスクが約30%も下がるだけでなく、脳卒中や心筋梗塞などさまざまな疾患リスクも大きく下がることが報告されています。血圧が少々高くても痛みや苦しさがあるわけではないので、ついつい服薬を怠りがちになる人もいるかもしれません。しかし「血圧を下げる理由とそのメリット」を知ると、きちんと服薬することがどれほど大事なのかがよくわかってきます。ご自身の内服状況をもう一度見直してみましょう。
「ステージC・D」は心不全を発症した状態で、途端に服用する薬の種類が増えます。これらの薬の多くは、服用による効果を実感しにくいという特徴があるのですが、実は「生命予後改善」という重要な目的を持って使用しています。なるべく早期から服用を開始し、きちんと継続することで心臓の機能を守り、心不全の進行を予防してくれます。また、これらの薬の多くは導入後、必要量まで増量していく必要があります。「症状が悪化したから増えてしまった」のではなく「症状が安定したら増やすことができる」薬もあるのです。

■最後に
このように各々の薬の重要性を少し踏み込んで知ると、服薬意欲も湧いてくるのではないでしょうか。もし、薬に対する不安や飲み方等でお困りの人はぜひ、薬剤師に相談してみてください。
一緒に正しい服薬の先にある、より良い未来を目指しましょう!

企画 一般財団法人 里仁会

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