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自治体の皆さまへ

みなさんの健康

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山梨県中央市

◆耳の健康について考える
山梨大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科 助教 林亮

突然ですが質問です。みなさんの耳は健康ですか?聞こえは問題ないですか?自分の耳の中は健康と言えますか?普段の生活で聞こえに困ったことはないし聞こえは問題ないと考える人も多いでしょうが、自分の耳の中までは健康と断言できる人は少ないでしょう。われわれ耳鼻科医ですら特殊な器具がないと耳の中が健康だとは断言できません。耳の中を覗(のぞ)き込むと、耳の穴からの通り道である外耳道と、その突き当りである鼓膜(こまく)が観察できます。また、鼓膜は通常、半透明の薄い膜なので鼓膜の奥の中耳の状態も鼓膜越しに観察できます。今回は、この鼓膜と中耳に関し少しお話させていただきます。
中耳炎という疾患はみなさん聞いたことがあると思います。文字通り中耳の炎症ですが、中耳炎と一言で言ってもいろいろな中耳炎があります。急性中耳炎、慢性中耳炎、滲出(しんしゅつ)性中耳炎など、そのほかにもさまざまなタイプがあります。これらの多くは耳の中を観察するだけで診断することができます。急性中耳炎は、子どもがなりやすく、鼻かぜなどの菌が中耳内に入り急性に起こす炎症であり、鼓膜は赤く腫れ耳の痛みや耳垂れなどの症状を伴うため、気づかないうちに急性中耳炎になっていたということはあまりないです。対して慢性中耳炎は、多くは鼓膜に穴(鼓膜穿孔(せんこう))が開いており、慢性的な炎症を起こしている状態で、難聴となったり耳垂れを繰り返したりしますが、慢性的な症状のためあまり自覚症状がなく、なんとなく聞こえが悪い気がするくらいの症状の人もいますし、中には全く症状がない人もいます。滲出性中耳炎は中耳内に滲出液という透明な液体が溜まってしまう疾患ですが、軽症であれば少し聞こえが悪くなる程度で、歳のせいだと思ったけど一応耳鼻科を受診したら滲出性中耳炎だったということもあります。いずれの中耳炎もまずは薬で炎症を抑えることから始めますが、特に慢性中耳炎のように慢性的に開いている鼓膜穿孔は炎症を抑えても自然に穿孔が閉鎖することはなく、手術をしないと穿孔は閉鎖しないことが多いです。手術は鼓膜穿孔の程度や位置、中耳の状態により術式が変わりますが、最近では外来でできる閉鎖術もあります。
中耳炎以外にも、加齢性難聴など難聴となる原因はさまざまあります。今回はお話できませんでしたが難聴と認知症の関連性も言われてきています。先ほど述べたように手術で難聴を良くできる中耳炎もありますし、手術で良くできなくても補聴器という選択肢もあります。いずれにしても少しでも耳に不安があれば、まずはお近くの耳鼻咽喉科へ行くことをお勧めします。ときどきでいいので、ご自身の耳の健康について考えてみていただけると幸いです。

企画:一般財団法人 里仁会

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