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ほくと歴史めぐり

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山梨県北杜市

■北杜市内最古の失われた算額~須玉町若神子・東屋(あずまや)神社の算額~
皆さんは「算額」をご存知でしょうか。算額とは、数学の問題を記した額や絵馬のことで、江戸時代前期から明治時代にかけて全国の神社仏閣へ数多く奉納されました。
北杜市においても、明治3(1870)年、5人の和算家によって高根町の熱那(あつな)神社へ算額が奉納されました。これは、19世紀以前に山梨県域で奉納された算額のうち唯一現存するものであり、北杜市の文化財にも指定されています。
しかし、かつて市内にはさらに古い算額がありました。それが奉納された時期は熱那神社の算額奉納から44年も前の文政9(1826)年のこと、場所は現在の須玉町若神子の東屋神社でした。東屋神社は、須玉総合支所前交差点を西に進み、道なりに400mほど登った場所にある小さな神社です。
東屋神社の算額が失われた経緯は分かっていませんが、その内容は、江戸時代に出版された書籍『祠殺匾掲算法(しさつへんけいさんぽう)』によって知ることができます。それによると、奉納者である若神子村の成嶋浅吉茂元(なるしまあさきちしげもと)は、馬場小太郎正統(ばばこたろうせいとう)という江戸の和算家に和算を教わったようです。
さて、東屋神社の「失われた算額」に記された問題の大意は、「直径と高さが等しく、底・蓋・側面の厚みもそれぞれ等しい容器の外側の面積がx、内側の面積がyの時、容器の容積を表す式を求めよ。」といったものです。ところが、この容器は円柱を加工した特殊な形状をしているため、計算はより複雑になります。現代数学を知っている私たちにとっても相当な難問でしょう。同時に、その特殊な形状は、問題の難化と並び、美しさやユニークさの表現という点で、この算額最大の魅力ともいえます。そもそも算額奉納には、神仏に和算の上達を祈念・感謝する信仰的な意味のほか、奉納者の自己宣伝の意味合いもありました。そのため、このように人目を惹くデザインや色使いが重要視されていたと考えられるのです。
10月21日から北杜市郷土資料館で開催する企画展「和算を楽しむ者たち~北杜の和算家と算額~」では、東屋神社の算額についても展示します。ぜひ足をお運びいただき、一味違う数学の世界に触れてみませんか。

問合せ:学術課
【電話】42・1375【FAX】32・6497

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