■同時開催「山本正文版画工房展」
▽山本正文 略歴
1947年山梨県中巨摩郡櫛形町(現南アルプス市)に生まれる。大学卒業後フランスに渡り、翌年スペイン・バルセロナに移り、バルセロナ工芸応用美術学校で版画を学ぶ。その後バルセロナで工房を構え、バルセロナの現代版画界に大きな貢献と影響を与える。1980年代初頭からは、詩画集の制作にも力を注ぐようになり、現在もライフワークとなっている
◆開催記念特別対談
南アルプス市長 金丸一元×南アルプス市立美術館長 向山富士雄×版画家 山本正文
南アルプス市立美術館では、12月1日(日)まで、本市出身で、現在はスペイン・バルセロナで版画家として活躍している、山本正文さんの作品展「幽玄なる美の世界山本正文と詩人たち」と「山本正文版画工房展」を開催しています。
山本さんの50年におよぶ版画人生や、約600点の作品を市立美術館に寄贈することに至った経緯、故郷への思いなどを伺いました。
向山館長:山本さんは、旧櫛形町上今井のお生まれで、豊小学校、櫛形中学校、巨摩高校に進学、その後、習志野高等学校、千葉工業大学建築科を卒業し、卒業後は海外に渡られました。なぜ海外に渡ろうと思われたのですか。
山本先生:建築を学びはしましたが、建築の仕事をするのは難しいと思い、5年を目途に、外国へ行こうと思い立ちました。学生の延長みたいな感じで。若い頃の勢いというやつでしょうね。
金丸市長:絵を志すきっかけは何だったのですか。
山本先生:パリに滞在していた時、とある絵描きからバルセロナの話を聞き、一か月ほど滞在してみたところ、バルセロナの雰囲気がとても気に入り、どうしてもバルセロナに住みたくなってしまいました。バルセロナに行ってからは、美術学校の版画科に登録をしました。この時点で、今の姿を想像していたわけではありません。バルセロナにはたくさんの版画工房があって、そこで仕事をする機会にめぐまれるうちに、初めてこの世界のことを真剣に考えるようになりました。
金丸市長:絵の素養があるといつ気が付かれたのですか。
山本先生:僕は絵の素養があると思ってはいません。僕が版画の世界に対して思っているのは、ただやっているということなのです。ある目的、あるイメージを持ってやっているのではなく、できたものが僕だと思っている。それが今回の展覧会で皆さんに見てもらっている作品なのです。
向山館長:最大の理解者であるお兄さんについてお聞かせください。
山本先生:バルセロナに渡った当時、兄は僕のことを心配して、バルセロナに来ては色々と助けてくれました。しかし当時の僕は家族なので助けてくれるのが当たり前だと思っていました。今考えると、大変なことだったと思います。作品を作るにあたっても、僕の作家人生にとっても、兄はいつも率直な意見を言ってくれ、とても深く関わってくれています。
金丸市長:この度、先生の作品を含む、著名作家の作品など約600点の作品を市にご寄贈いただきました。ご寄贈に至る先生の思いや、また故郷に対する思いなどをお聞かせください。
山本先生:故郷にある美術館で、自分のコレクションを持っていてもらえれば、100年200年と後世に伝えてもらえ、大変価値のあることと思ったわけです。ふるさとは遠きにありて思うものと言った人がいますが、やはり自分の故郷に対しては、帰って肌で感じる特別な場所だと思っています。
向山館長:この度の展覧会では、山本さんにご寄贈いただいた作品を中心に、ヨーロッパや中南米の著名詩人とコラボレーションした詩画集の展示と、版画工房の紹介や版画工房で生み出された著名画家の作品を展示しています。展覧会への思いをお聞かせください。
山本先生:絵というのは食べ物と同じ感覚だと思っています。いわゆる好き嫌いというのはどうしようもないことですが、嫌いだったものでも、何度も食べていると好きになってしまうこともあります。そんな感じで、見てくれた人が作品から何かを受け取り、何らかの感情を持ってくれれば大変うれしく思います。
金丸市長・向山館長:山本先生本当にありがとうございました。
◆幽玄なる美の世界 山本正文と詩人たち
開催期間:~12月1日(日)
開館時間:9:30~17:00
※入館は16:30まで
休館日:11月5日(火)、11月11日(月)、11月18日(月)、11月25日(月)
入館料:一般320円・大学生260円(20名以上団体料金2割引き)
※高校生以下、市内在住65歳以上の方は無料です。
◇関連イベント 銅版画刷り実演
講師:山本正文
日時:11月17日(日)14:00~
場所:市立美術館研修室
定員:30名
※要申込定員になり次第終了
参加料:入館料に含む
申込受付:11月2日(土)9:30~
問合せ:市立美術館
【電話】282-6600
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