■発掘調査の「その後」 fumotto南アルプス建設に伴う遺跡発掘調査レポート
(1)カマド内土壌サンプル採取
土の様子を観察し土器などに注意しながら、カマド内部に堆積している土をサンプルとして採取します。
(2)カマドの調査・記録
カマド内部に堆積していた土を採取しながら取り除き、カマド構築に使われた石や利用によって赤く焼けた内部の様子、土器などの出土状況を記録します。
(3)カマド内土壌の水洗選別
サンプルとして採取した土を乾燥させます。土の量を記録し、土を水に入れて溶かしながらかき混ぜ、浮いてきた炭化物をすくい取ります(水洗・浮遊選別法)。
(4)試料の回収
すくい取った炭化物はガーゼに取り乾燥させます。沈んで残った土もふるいに通して、細かな骨片(こっぺん)や土器片の有無を確認します。
(5)採取した試料(左上:炭化種実 右上:モモ核か? 右下:微細骨片)
すくい取った炭化物を確認すると、穀類と思われる炭化種実や炭化木片、細かな骨などが含まれており、顕微鏡で観察し種類の同定をおこない、当時の食材や燃料に使用した木の種類を調べます。
※詳細は本紙P.14~15をご覧ください。
令和六年六月三十日にfumotto南アルプス地域交流エリアがオープンし、多くの人々が訪れ南アルプス市ならではの魅力を楽しんでいます。
fumotto南アルプスが建設された場所は広報一月号でもご紹介した通り、複数の遺跡が存在しており、令和四年十月から令和五年九月末まで約一年をかけて、記録保存が必要な範囲の発掘調査を実施しました。弥生時代から近世・近代に至るまでの約二千年間にわたる人々の活動の痕跡を確認し、調査をおこないました。
発掘調査は現地で遺構(竪穴建物跡(たてあなたてものあと)や溝、井戸など)を掘って終わりではありません。土器など遺物の整理(洗浄や図化)、図面や記録の整理・確認などいくつもの段階を経て発掘調査報告書を作成します。報告書が刊行されてようやく発掘調査の終了となります。調査した遺跡をより理解するために、現地での発掘調査終了後にもさまざまな調査や分析を行う必要があります。今回は現在おこなっている「発掘調査後」の調査について、ご紹介いたします。
fumotto南アルプス建設に伴う発掘調査ではカマドを持つ竪穴建物が多く調査されました。カマドは調理施設のため、カマド内に堆積した「土」を調べることで当時の人々が食べていた食材を知る手がかりを得ることができます。そのためカマド内の土を採取し調査をおこないました。乾燥した土を水に入れると、炭化物は水より比重が軽いので浮いてきます。浮いてきた炭化物をすくい取り、炭化した種実(しゅじつ)や木材が含まれていないかを調べます。この方法を水洗(すいせん)・浮遊選别(ふゆうせんべつ)法と言います。こうして得られた試料を顕微鏡で観察し、種実や木材の種類を同定することで当時の食生活や調理法、燃料に使用した木材などを推測することができます。
これらのデータを分析・研究し、発掘調査報告書にまとめられます。五年後の刊行を目指し、現在整理作業を進めています。
ふるさと文化伝承館では調査成果の一部として整理作業の終了した遺物を展示しているミニコーナーを設置しています。ご覧いただき、いにしえの人々の生活に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
文・写真 文化財課
▽速報展示コーナーのご紹介!
fumotto南アルプス建設に伴う発掘調査で出土した遺物の速報展示を行なっています。
整理作業の進捗状況に合わせて定期的に展示品の変更を行う予定です。
現在は平安時代の建物跡から出土した当時の高級食器、灰釉陶器(かいゆうとうき)と中世の井戸から出土した石臼(いしうす)・五輪塔(ごりんとう)を展示しています。発掘調査の最新成果をぜひご覧ください!
場所:ふるさと文化伝承館1階(野牛島2727)
【電話】055-282-7408
休館日:木曜日(祝日の場合は翌日休館)
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