■普段見過ごしがちな肩・腰・膝などの痛みについて、医師に聞きました
監修:加納岩総合病院 院長 整形外科医・スポーツドクター 中澤 良太 医師
◆皆さんも、一度は肩や腰・膝などに痛みを経験したことはありませんか?
身体の不調には様々なものがありますが、その中でも“痛み”は普段の生活に支障をきたします。その”痛み”にも、筋肉痛・腰痛・関節痛・リウマチ・神経痛など様々なものがあります。
今回は、“痛み”について、どのような対処法があるのか、整形外科医でスポーツドクターでもある、加納岩総合病院院長の中澤医師にお話しを聞きました。
◆整形外科を受診する患者さんの症状で多いのは、肩・腰・膝?
整形外科を訪れる患者さんで特に多いのは、やはり肩や腰、膝の痛みです。特に山梨市は農家が多いため、長年の農作業で身体に負担がかかり、肩や腰、膝の痛みを訴える患者さんがよく見られます。中でも多いのは、関節の変形や骨粗鬆症に伴う痛みで、痛みに耐えながら作業を続けているという事例も少なくありません。
これらの痛みは、繰り返される動作や姿勢が原因で、慢性化しやすい特徴があります。特に農家の場合、頭から上に手をあげての長時間作業や、持ち運びの作業が多く、それらを長年続けることで次第に肩に痛みが出現しているのではと考えられます。
◇痛みを放置して、悪化してしまうケースも
農繁期や仕事によっては、病院に来たくても来られないということも多いと思われます。生活に支障のある痛みがあったとしても、我慢して受診のタイミングを逃し、症状が悪化してから受診することが比較的多いのが現状です。
◇スポーツ外来では痛みに対する治療だけでなく、再発予防やケアが重要!
スポーツ外来では、スポーツ外傷とスポーツ障害という分け方は重要で、外傷はいわゆる「怪我」で、脱臼や骨折などきっかけが明確にあることが多く、治療のメインはその外傷箇所の治療になります。一方、障害はいわゆる「故障」で、身体機能低下によって徐々にその部位に負荷がかかり痛みを出していくもので、結果的に痛い部位と原因部位が異なる(改善すべき箇所が疼痛部位に限らない)ことがあります。
早めに医療機関を受診し、原因を見極めることで、痛みに対する治療に加え、再発予防の説明やリハビリスタッフによるケアを受けることができます。
◆それぞれの痛みに合わせた治療法の選択
痛みの治療方法は多岐にわたるため、個々に合った的確な治療選択ができるよう努めています。診断は、診察による所見はもちろん、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査、いまでは超音波機器を用いた動的評価も含めた検査、診療を行っています。治療は主に薬物療法や注射治療、リハビリテーションなどを必要に応じて実施しています。それでも改善が見られず、手術が必要な場合には、できる限り侵襲性の少ない手術を行い、早期復帰を目指します。
◇新たな医療法「体外衝撃波治療」
近年、非侵襲的な方法で痛みを軽減する新しい治療法として「体外衝撃波治療」が注目されています。痛みのある全ての患者さんに適用となるものではありませんが、この治療は、衝撃波を患部に当てることで血流を促進し、組織の修復を促します。特に慢性的な痛みやスポーツによる損傷、腱炎などに対して良い結果が得られています。
加えて、PRP(多血小板血漿)といわれる療法は、体外衝撃波治療と相性が良いというデータもあり、現在はPRP療法を行いながら、必要に応じて体外衝撃波治療器が導入されている医療機関を紹介する場合もあります。そのようにして治療選択肢を増やし対応することが、個々にあった的確な医療提供を行っていく上では重要だと考えます。
◆自宅でできる痛みへのケアを紹介
自宅でできるケアとして、まず重要な考え方は、無理のない範囲で継続的に行うことです。主に全身のストレッチや体操を含めた適度な運動が理想ですが、「ゆっくり・大きく・数多く」が続けていく上で大切です。そして肩や腰、膝の痛みを軽減するためには、筋肉を柔軟に保ち、関節の可動域を広げることが大切で、特に肩甲骨まわりや股関節まわりを意識した運動がより効果的です。
◇痛みは冷やす?温める?
冷やすことで炎症を抑えることができる一方、慢性的な痛みには温めることで血流を促進し、痛みの緩和を助ける場合もあります。痛みがある箇所に湿布や市販の痛み止めを利用することも可能ですが、症状が長引く場合は医師の診察を受け、重症ではないことの確認や、的確な診断をしてもらい、改善するための方向性を理解・共有することが重要です。
◇痛みへのケアには姿勢の改善も大切
長時間同じ姿勢を取らないよう心がけ、定期的に体を動かすことが結果的に姿勢悪化予防やそこからくる痛みの予防につながります。また良質な睡眠をとることや、クッションやインソールを使用して足腰への負担を軽減することも痛みの緩和に影響を与えます。
痛みは放置することで悪化することもあり、症状が軽い段階で早期に対処するように心がけましょう。
◆痛みは我慢せず早期に病院を受診
痛みが長引いたり、改善が見られない場合は、ぜひ一度病院を受診してください。痛みは、単なる疲労や軽い怪我だけでなく、深刻な病気の兆候であることもあります。適切な診断と治療を受けることで、症状を悪化させずに早期に改善できることがあります。日常生活に支障をきたす前に、専門医の診察を受けることが重要かと考えております。痛みを我慢せず、お気軽にご相談ください。
◇日常的なケアや予防策にも目を向けましょう
病院での治療だけでなく、日常的なケアや予防策にも目を向け、健康的な生活習慣を築くことも重要です。適度な運動やバランスの取れた食事、十分な睡眠も、痛みの改善と予防に大きく寄与します。痛みを軽視せず、体の声に耳を傾けることで、より健やかな毎日を送りましょう。
問合せ:健康増進課健康づくり担当
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