■恵那の中山道 岡瀬沢から大井宿まで
西部良治(りょうじ)さん
市内の中山道は大井町の岡瀬沢から武並町藤までおよそ12キロあり、市の中心部を東から西へ横断しています。
それでは、市内の中山道の東端にある岡瀬沢から歩き始めましょう。中津川市との境から西に歩くと、広久手(ひろくて)坂を過ぎて1キロほどで甚平坂(じんぺいざか)公園に着きます。ここには馬塚、犬塚といった根津甚平(じんぺい)伝説に関わる塚があり、甚平坂を登りきると、左手には根津甚平をまつる根津神社があります。根津甚平は、鎌倉幕府に仕えた信濃の武士で、人々を悩ませていた怪鳥「八重羽(やえば)のキジ」を退治するため、犬や馬、タカと共に関戸へやってきましたが、犬、馬と共に息絶え、この地に葬られたという言い伝えがあります。根津神社にある、岐阜県指定文化財の「関戸の宝篋印塔(ほうきょういんとう)」は、甚平の供養塔とされ、県内最大級の大きさです。型式などからすると室町時代頃の制作ではないかと考えられています。
甚平坂から600メートル程行くと下り坂になり、中央道を越えて菅原神社前の階段を降りると、上宿(うわじゅく)に入ります。上宿には上宿石仏群があって15体ほどの石仏が並んでいます。特に目を引くのは、大きな石に浮彫のように彫られた馬頭観音で、文政9年の年号と女性8人の名が彫られています。おそらく女性のみの集まりがあり、旅の安全を祈願して寄進したものでしょう。ここを過ぎて五妙坂を下り、横町川を越えると、中山道大井宿に入ります。大井宿は江戸から87里30町8間(約345キロ)の距離にあります。
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