東白川村国保診療所
医師 神谷理斗
肝臓は主に(1)からだに必要な蛋白の合成・栄養素の貯蔵(2)有害物質の分解・代謝(3)消化に必要な胆汁の合成と分泌の3つの働きがあります。
脂肪肝とは肝臓に脂肪酸が沈着することで炎症を起こし、自覚症状がありません。肝臓の線維化が進行し、数年から10数年の年月を経て肝硬変に至る可能性があります。肝硬変になると、肝臓がんや肝不全(肝臓の機能が損なわれ生命の危機につながる病気)、食道胃静脈瘤(突然の大量吐血を引き起こす病気)など重篤な疾患を引き起こします。
肝臓がんのうちB型・C型肝炎によるものは全体の約3割に減少している一方で、脂肪肝が原因となるものは約5割に増加しており、前段階での早期診断・介入は喫緊の課題となっています。
◆原因
脂肪肝の原因は大きくわけて、(1)アルコール(2)生活習慣病関連(3)薬剤や遺伝病など特殊な病態(4)原因不明の4つがあります。
健康日本21※によると男性1日40g以上、女性1日20g以上のアルコール摂取量で生活習慣病のリスクとなりますが、脂肪肝においては男性1日30g以上、女性1日20g以上で注意が必要です。20gとはビール500ml、日本酒1合、焼酎グラス1/2杯(100ml程)、ワイン2杯程です。
※「21世紀における国民健康づくり運動」を正式名称とし、全ての国民が健康に生活できる社会の実現を目的に策定された指針。
生活習慣病の関連では血圧130/85mmHg以上、高血糖、高中性脂肪・高悪玉コレステロール(LDL-C)、低善玉コレステロール(HDL-C)、肥満のどれか一つでも満たす場合は危険度が増します。
◆予防・治療法
・飲酒は適度な量を心がけましょう
1日の飲酒量は先程の量を目安とし、最低でも週2回は休肝日が必要です。
・間食や食事内容を見直しましょう
・週3日、1回20分の軽い有酸素運動から始めましょう
運動による痩身効果だけではなく内臓脂肪減少や、代謝の改善による血糖値・コレステロール値低下、下肢の筋力維持につながります。
肥満体型の方は体重の7%減量が目標とされます。体重70kgの方で5kg程になりますので大変に感じるかと思いますが、上記のように生活を見直せば自然と無理なく減らすことが可能です。また、糖尿病治療薬の中には血糖改善に加えて食欲抑制効果がある「やせ薬」もあり、脂肪肝の改善効果も報告されています。
◆改善された方の治療例
60代男性
身長165cm/体重60kg/BMI22.0アルコールは週1~2回少量程度、食事は揚げ物中心、間食はコ―ヒー(砂糖入り)と菓子類を少量、事務職で運動習慣なし数年前から健診で肝機能低下が指摘されるようになった
◇取組内容
・間食を砂糖なしのコーヒーのみに変更
・食事に野菜を取り入れる
・15分程歩いて通勤
3か月後
◇結果
体重約2kg減量、肝機能改善、悪玉コレステロール・中性脂肪の低下
→成果を得られたことで意欲的になり、3か月に一度通院し血液検査を希望されるようになった。翌年から健診で異常は指摘されなくなった。
問合せ:保健福祉課
【電話】0574-78-2100
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