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みのかもの山、望む山 第6回

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岐阜県美濃加茂市

この地域にあって身近に親しまれている山や、はるかに望む山々について、まつわる歴史や文化を紹介します。

■平木山(ひらきやま)
標高544M

昔々、美しい平木の山に大蛇が住んでいました。平木の愛宕(あたご)さまに仕えて、雨に係る役割を果たし、大蛇は雲を呼び出して、大雨、小雨どんな雨でも自由に降らせました。
平木山の愛宕さま『故里の伝記』より

地域で語り継がれる伝承には、当時の人と山との関係性が色濃く表れるものです。三和町川浦にある平木山は古くから水に霊験(祈りに対して現れる利益)があり、日照りが続くと村人たちが登って雨を祈願したといいます。山上には「平木の愛宕さま」とあがめられた地蔵菩薩を中心に石垣が祭儀場のように区画され、さらに先の頂上には治水や利水に御利益があるとされる十一面観音が奥の院として祭られ、神聖な祈りの地であった痕跡を今に留めています。
一方で、水の恵みは時として私たちにその牙をむきます。冒頭の昔話に登場する大蛇はある時、愛宕さまの許しもなく勝手に大雨を降らせたことで川があふれ、家屋が流出して田畑が泥水に埋まってしまったそうです。平木山は川浦川の源流にあたり、この川の流れはネコギギやゲンジボタルなど貴重な生き物を育んできました。しかし時に氾濫して近隣に甚大な被害を与えたことは、役場の記録や川沿いの石碑など多くの資料が物語っています。
平木山を含む御殿山(ごてんざん)山系は、昔から人の声がする山でした。御殿山から平木山へと連なる尾根には廿屋(つづや)と神渕(かぶち)(加茂郡七宗町)を結ぶ街道の峠があり、かつてこの一帯は、集落や組単位で共同で所有する「入会山(いりあいやま)」としてその資源が利用されていたようです。
雨乞いの石仏の傍らに立ち、当時の人々も見たであろう下界の風景を眺めていると、この山とともにひたむきに生きる人たちの生活の足音がひしひしと聞こえるようです。

参考文献:『故里の伝記(社会福祉協議会三和支部:1987年)』

問合せ:文化の森
【電話】28-1110

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