■一人の中にある多様性
塾講師の経験から、子どもたち一人一人が持つ個性の多様さに気付きました。しかし、学校や社会では、その多様性が十分に尊重されていないことがあると感じたことがあります。例えば、ある生徒が抱えた生きづらさや学びづらさは、環境面を工夫すれば小さくなる場合もありますが、実際には、「その子自身の問題」とされ「個人が変わる」ことを求められることもありました。
私たちは、一人一人が異なる経験や価値観を持ち、状況によってさまざまな側面を見せます。職場では責任感のある厳しい顔、家庭では愛情深い親の顔、友人との間では気さくな顔など。この多様性を理解せずに、ある一面だけで人を判断してしまうと、その人が持つ可能性を狭めてしまう恐れがあります。
美濃加茂市で始まった重層的支援体制整備事業は、その人の大切にしている思いを理解したいと願いながら、さまざまな機関が連携し、一人一人のニーズに合わせ、多方面から支援を提供する仕組みです。この体制に欠かせないのが「多様性」の理解です。なぜなら、支援を必要とする人は、単に困っているだけではなく、さまざまな背景や複雑な問題を抱えていることが多く、その人を立体的に捉えなければ、適切な支援を届けることができないからです。
その人が持つ「多様性」に、あなたも私も地域も行政も寛容な気持ちで向き合い、思いやりのある行動へと結び付けていくことが求められています。それは、単に困っている人を助けるということだけでなく、一人一人の可能性を最大限に引き出し、より豊かな社会を実現することにつながるのだと思います。
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