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水紋

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岐阜県羽島市

■語らぬ人
広報アドバイザー(元中日新聞記者)
西尾 敏正

戦後78年の8月を送った。羽島通信部にいた頃、夏は戦争に関する記事をよく書いた。大事な使命と思い。ところが盲点があった。父はシベリアの抑留者なのに体験を聞いていない。語らぬ人だった
平成14年、83歳で亡くなる。遺品に「シベリアの雪」と題する赤茶けた手作りの薄い歌集を発見。〔待ち焦がる/ダモイ(帰国)は何時ぞ/果てし無き/雪のシベリア/今日も日が暮れる〕〔如何ならむ/ことにあふとも/たゆむなく/我は踏むべし/ふるさとの土〕。「在ソ中の歌を復員後の昭和23年11月に編む」とあった
苛酷な環境下での20代。なんとしても帰国する―との強い思いがにじむ。病に倒れた晩年、アルミの凸凹したスプーンで食事をしていた
後で知ったがシベリアで作ったスプーンだった。舞鶴市の「舞鶴引揚記念館」に同様のスプーンがたくさん寄贈されている。「語らぬ」(or「語れぬ」)人の胸中にこそ光を当てたい。
※「(帰国)」は筆者の注。

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