■「今すぐ逃げて‼」声で背中押す
羽島市長 松井聡
元旦に発生した能登半島地震。大きなつめ跡を残した被災地では、復旧作業が進められています。羽島市からも、緊急消防援助隊岐阜県隊員としての消防職員の参加をはじめ、罹災証明受付、応急給水、下水管きょ被害調査の活動へ職員を派遣しています。
そんな中、私は発生直後にテレビから流れた、NHK山内泉アナウンサーの呼びかけに強い印象を抱きました。
1月1日午後4時10分頃、石川県輪島市の東北東でマグニチュード7・6の地震が発生。同県志賀町では震度7が観測され、羽島市でも当初、震度3の発表があった横揺れを感じました。元日の夕食前に起きた地震に、急いで玄関を開けて家族を外に連れ出し、しばらくして室内に戻ると、NHK災害報道が始まっていました。
女性アナウンサーの山内泉さんが、津波警報発令を知らせた後「テレビを見ていないで急いで逃げてください」「引き返したりしないこと」「今すぐ逃げること」等と連呼されました。その口調の強さには、少なからず驚きました。
予想通り、山内アナの報道後、SNS上は大騒ぎ。「突然の絶叫モード変換」「叫びすぎ」との意見がある一方「こんなふうに危機感を伝えられるアナウンサーはいない」といった反応等があったようです。
山内アナの呼びかけは、NHKアナウンス室が2021年に取りまとめた「地域版命を守る呼びかけ」と題したマニュアルに沿ったものでした。マニュアル作成には、全国40以上の局が参加。若手アナウンサーが中心となり、防災の専門家や行政機関、地元住民の方々にヒアリングを行いました。そして600ページにわたるマニュアルに取りまとめ、NHK内の周知を進めたのは、横尾泰輔アナ、井上二郎アナ、高瀬耕造アナらチーフアナを中心とした面々とのことでした。
チーフアナの方々は東日本大震災の折、災害状況を伝える無力感を味わい「ことばで命を守る」報道姿勢を後輩の皆さんに育み、その結果が今回の山内アナの呼びかけにつながったと、局内では評価されています。
アナウンサーの役割は、ニュースや情報を伝えたり、番組の司会を務める。台本に基づき、自分の言葉やスタイルでナレーションや司会をする。人々に情報をわかりやすく伝えるため、ニュース原稿を正しい発音で読み上げる。インタビューの相手に的確に質問し、視聴者の知りたい情報を引き出すように誘導する等が挙げられます。
山内アナは現在、東京アナウンス室に所属しています。それ以前は、金沢放送局で2021年3月まで勤務されていたそうです。慣れ親しんだ前任地での思いを込め、懸命に命を守る行動を呼びかけられた今回の報道は、アナウンサーのマニュアルを超越した心の伝達だと思いました。
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