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自治体の皆さまへ

シリーズ人権 みんなで考えよう。人が人らしく生きるために…

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岐阜県養老町

◆私たちにできること ~迷惑動画の拡散から考える~
◇迷惑動画の拡散
インターネットの普及により、不特定多数との言論・情報交換の場として、急速に拡大をはじめたSNS。そこで昨今、話題になっているのが、迷惑動画の拡散です。
過去、飲食店やコンビニエンスストアなどのアルバイト店員が、職場で迷惑行為や悪ふざけを行い、それをSNSに投稿するということがありました。これらは、企業の信頼を大きく失墜させるなど、与える影響が甚大であることから「バイトテロ」と呼ばれ、社会的批判を招くという事態になりました。事実、店舗によっては、一定期間休業したり、閉店にまで追い込まれたりしてしまったということもあったようです。迷惑行為を行った人たちには、多額の損害賠償の請求がなされたという情報もありました。迷惑動画は、動画投稿者が店員でなく消費者というだけで、基本的な構造は同じです。
「バイトテロ」という言葉が使われ始めたのは、2013年。それからすでに10年の月日が流れました。迷惑行為を行った人たちが、どのような社会的制裁を受けることになったのか、周知の事実であるとも言えます。しかし、このような動画の投稿は後を絶ちません。むしろ増加傾向であるようにも思えます。このようなことは、なぜ繰り返されてしまうのでしょうか。

◇今、SNSで起きていること
前述したように、これらの迷惑動画は、企業などに大きな影響を与えるだけでなく、投稿を行ってしまった本人、グループにとっても、その代償は非常に大きなものです。もちろん迷惑行為を行い、それを撮影、投稿することについては、どんな事情であれ、社会に与える影響の大きさからも、厳しい措置が求められるべきだという意見も理解できます。それが一定の抑止力にもつながるからです。しかし、今、SNSの中で起きていることが、これらの問題の根本的な解決につながっていくとはどうしても思えないのです。
今、ウェブ上で何か問題発言があったり、迷惑動画が挙げられたりしたのが確認されると、その対象者に対する多くの批判的なコメントが殺到します。(これらはその様子から「炎上」と呼ばれます)一見、何かしらの発言や行為に対して、それは「間違いであること」「許されないことであること」を示し、その言動を行ったものに対して反省や謝罪を促すものになっているとも捉えられますが、現状行われていることは、その域を超えてしまっているとも感じます。
今回の迷惑動画で言うなら、本人特定(年齢・学校名・住所)から始まり、家族構成、時には生育歴など、ネット上に出回っているのは、目を疑うものも見受けられます。そして、収まることのない誹謗中傷。ここからは、何か間違いを犯した人間には、何をしてもよいのだ、自業自得だからこのような仕打ちを受けるのは当たり前だ、という声が聞こえてきそうです。おそろしいことに、もはやそこでは、他者を追い詰めること自体が目的化(それにより承認欲求を満たす)してしまっているのではないでしょうか。

◇私たち大人ができること
私たちにできることは多くはないかもしれません。ただ、私たちがインターネットの普及に伴う危険性について学び、それを子どもたちに伝えていくことはできるはずです。ネット上では、様々なことが私たちの想像するスピードを超えて進化し続け、私たちの知っていることはすぐに過去のことになります。しかし、そこに生じる問題の多くは、自分と相手を大切にする思考ができさえすれば、回避できるものなのです。すべきことは、起こったことに対する誹謗中傷ではなく、これからこのような問題が起きないように、これからを生きる子どもたちや若者が当事者にならないために、私たちが何をするか考え、行動することなのです。
いつからか日本は、不寛容社会になったと言われています。相手を厳しく糾弾することも、時には必要なのかもしれませんが、私はやはり、相手を大切にする思いやりが心と心をつなぐ、そんな社会こそ目指したいと思います。皆さまはどうですか。

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