■尊い命を守るために
◇世界で今起きていること
ロシア軍がウクライナへ軍事攻撃を開始したのが、令和4年2月でした。現在も軍事侵攻は続き、多くの犠牲者が出ています。さらに、イスラエル・パレスチナにおいても紛争が激化し、多くの尊い命が失われています。その多くが子どもであるという目を覆いたくなる報道もありました。このように、今世界では、命が軽んじられているといえることが現実に起こっています。
人権の根源は「生命の尊重」であるはずです。私たちは、命の問題から決して目を背けてはなりません。今回は、あるデータから国内に目を向け、尊い命を守ることについて、私たちにできることを考えていきたいと思います。
◇自殺者数の増加
2022年の全国の自殺者数が報告されました。全体としては、21年より297人増加して、2万1881人、女性は3年連続の増加、男性は13年ぶりの増加という結果でした。警察庁の自殺統計を基に、厚生労働省がまとめたものです。
これらはコロナ禍の影響も一因とみられますが、小中高生の自殺者数は、統計開始後初めて500人を超え過去最多の514人でした。この結果を受け、文部科学省から7月、「児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)」が発出されました。こども家庭庁、厚生労働省からも同様に、自殺対策、予防について通知が発出されています。
児童生徒の自殺者数の増加に心を痛めている人も多くいらっしゃると思います。子どもが自ら死を選ぶしかなかったという現実を、私たちは受け止めなければならないと思うのです。
◇学校・家庭・地域が連携して
文部科学省の通知には、以下の4つの取組に言及がありました。
(1)学校における早期発見に向けた取組
(2)保護者に対する家庭における見守りの促進
(3)学校内外における集中的な見守り活動
(4)ネットパトロールの強化
ここでは、特に(3)の内容について、皆さまにご紹介したいと思います。(3)には、学校と保護者、そして、地域住民が参画して、関係機関などと連携のうえ、学校における児童生徒への見守りを強化すること、とあります。これは長期休業明けの前後の集中的な見守り活動を指していますが、「地域住民の参画」という部分に、今、学校・家庭・地域が連携して子どもたちのかけがえのない命を守っていくことが重要であるとの認識が示されています。
もちろん、学校や保護者が児童生徒の悩みや変化を把握し、関係機関とも情報共有を図り、連携するなど、命の危機を防ぐために万全の体制で対応することは、これまでも大切にされてきたことです。しかし、学校や保護者だけの見守りでは、限界があります。見守る目は多いに越したことはありません。また、身近であるがゆえに、児童生徒の小さな変化が見逃されたりすることが起こり得るということも忘れてはなりません。立場を異にする大人が、その人がもつ感性で、様々な視点から子どもたちを見守るからこそ、子どもの些細な変化にも気付くことができるのだと思います。
◇今こそ地域の声かけを
「見守り」と言いますが、では具体的に何をすればよいのでしょうか。私は、やはり、地域の皆さまの、子どもたちへの温かい声かけ・挨拶だと思います。「何だ、そんなことか。」と思われた人もいらっしゃると思いますが、そんなことがやはり大切なのです。子どもたちは、大人と同じように、子ども同士で形成される人間関係の中で生きています。それは時に、大人よりも複雑であるとも言われます。大きなストレスを抱えることもあり、辛くなってもそこから逃げ出すことは容易ではありません。だからこそ、普段の人間関係の外側にある地域の皆さまの温かい声が、その子を救うことにつながるのです。いつも笑顔を向けてくれる、どんな時も気にかけてくれる、無条件で味方でいてくれる、そのような思いが少しずつ子どもの中で積み重なると、皆さまが、悩みをもつ子どもの新しい心の居場所となるのだと思います。
おはよう こんにちは と元気な声がわく町にしましょうー 今こそ、「元気な声」で心のつながりをつくるときではないでしょうか。
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