■伝えたい もち本膳のこころ
おもてなしも、もち尽くし。
もち食文化の覚えておきたい礼儀作法とは。
一関地方のもち食文化の特徴の一つに、改まった席で振る舞われる「もち本膳」があります。複数のもち料理が並んだもち本膳は、藩政時代に武家社会の儀礼から生まれたとされるおもてなし料理。その文化的背景や作法を伝えたいと、一関もち食推進会議が小中学生向けの体験学習を行っています。12月6日には舞川小学校で、講師がおとりもち(仕切り役)をしながら4~6年生に食べ方の作法を説明しました。
作法のポイントは食べる順序です。最初になますを一口食べた後、あんこもち、たくあん、料理もち、汁もちの順でいただきます。最後は空になったわんに湯を注ぎ、残しておいたたくあんで拭ってごちそうさま。あんこもちと汁もちはおかわりできますが、料理もちは遠慮するのが決まりです。
児童たちは説明に耳を傾けながら、もち料理を行儀よく味わい、客を敬う姿勢や心遣い、豊かな食材に恵まれていた地域の歴史に思いをはせました。
Q.もち本膳を体験してどう思った?
吉田仁香(きみか)さん(6年)
食べる順番があることに驚きました。作法を知ることができて良かったです。
佐藤藍維(あおい)君(5年)
作法は難しいけれど、受け継がれていることがすごいと思いました。
石川碧海(みう)さん(5年)
もちが大好きなので、もちに関することをたくさん知りたいと思いました。
■もち食文化 これまでとこれから
もち食文化の普及・発展に携わる2人に「もち」の価値と可能性を聞きました
伝統を次の世代へ!
一関もち食推進会議会長 佐藤 晄僖(こうき)さん(83)
一関地方のもちを名物料理として普及させる取り組みを、30年間ほど続けています。県外出身の妻がもち食文化を珍しがり、後押ししてくれました。最初は相手にされませんでしたが、仲間とめげずに運動を続け、平成3年に研究会、その後、官民でもち食普及推進会議をつくり、平成18年にもち文化研究会を立ち上げて学校給食にもちを取り入れました。そして平成22年、歴史や文化に精通する佐藤育郎(いくろう)さんらと一緒に一関もち食推進会議を発足させました。
小中学校でもち本膳の出前授業をやっていますが、こどもたちが積極的に取り組む様子が見られるとうれしいです。もちは「ふるさとを語るもの」の一つ。もち食文化が広がったのは、ここが米どころだからです。豊かな土地で育ったことに感謝し、もちをアイデンティティーとして感じてほしい。実際にもち本膳の席を経験した世代は高齢化していますので、授業を通して次世代につなげていかなければと思っています。
もちは神事と密接な関係があり、祈りを込める大切なものです。一方で、たくさんの人が楽しんでくれるイベントもいいものです。文化を継承するにはエンタメ性も大きな力になるでしょう。従来の「もち暦」は農作業を基本にしたもの。現代の楽しい行事を盛り込んだ「現代版もち暦」が作れたらいいと思っています。
世界に「MOCHI」を!
全国もちフェスティバル実行委員会委員長 松本 数馬(かずま)さん(44)
もちフェスはグランプリを選ぶやり方から、もちまきを目玉にしたイベントにシフトしました。「もちのまち」というシティープロモーションに軸足を置くためです。今回は2万個まいたのですが、これは私調べで国内最大級。こども専用エリアを設けたり、当たりくじを入れたりと盛り上げる工夫をしました。次回は3万個まきたいですし、「もちバズーカ」のような装置があれば面白いのでは、などと構想が膨らんでいます。
観光業を営んでいますが、海外旅行会社向けの商談会でバラエティーに富んだ一関地方のもちを紹介すると「ワオ」という好反応をもらえます。有名観光地が浸透した今、外国人旅行者はまだ知られていないものへの関心を高めているので、一関地方ともち食文化は誘客のチャンスだと思います。
そんな中で課題に感じているのは、もち料理を提供する市内飲食店の情報が観光客に伝わっていないこと。特に夜に食べられるもち料理の情報がもっと欲しいところです。また、もち米の生産者を減らさないために、もち米の消費につながることも考えていかないといけません。
もちが世界に広まれば「一関に行ってみたい」という人が増えるはずなので、まずは認知度を上げることが大切です。ワインのように、生産地が世界中に認知されることは究極の地方創生。もちにはそうなる可能性と夢があります。
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