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自治体の皆さまへ

これが、僕の朝活 特集大学生スクールガード

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岩手県滝沢市

■慣れ親しんだこの道で
「おはようございます」
午前6時50分、JR田沢湖線小岩井駅前の広場に、青年の澄んだ声が響いた。青いポロシャツに蛍光色のベストを重ねた彼は、ベテランのスクールガードと挨拶を交わした後、駅を北側に200メートルほど歩いた先で、朝の活動を始める。吉清水洸平(よしみずこうへい)さん、20歳。スクールガードが朝の日課だ。
今年の6月、登校する小中学生を見守るこのボランティア活動に参加した。現在約250人いる市内のスクールガードの中で最も若い。平日は毎朝7時10分ごろまで担当する三差路に立ち、7時14分の上り列車の出発に合わせて駅まで戻り、元気に乗車していく子どもたちを見守っている。
自宅が小岩井地域にあり、学齢期には友達の家へ遊びに行くため自身もこの道をよく歩いていた。慣れ親しんだこの道で、雨にも負けず、風にも負けず登校する子どもたちを見守りながら、笑顔で声を掛け続ける吉清水さん。
ある日の朝活に密着しながら、その思いと活動経緯について話を聞いた。

■ボランティア道の始まり
盛岡大学文学部3年の吉清水さんは、入学以降の2年5カ月間で、規模や期間などの異なるボランティア活動を100件近く行ってきた。
「遊びに行っている感覚に近いですね」と語る吉清水さん。辛いと思ったことはないという。そうした活動に参加し始めるきっかけとなったのは、入学間もない頃、新入生をサポートする学校生活アドバイザーの上級生から、ボランティア活動への参加を誘われたことだった。
その後、程なくして「チャリティーサンタ」というイベントにボランティアとして初めて参加。子どもたちへプレゼントを贈るチャリティー企画のブースを担当した。ここでは来場した子どもたちに折り紙を教えるなどして過ごしていたが、同じく参加していた一人の先輩による「伝え方の工夫」が深く印象に残っているという。それは、単に折り紙を「内側に折る」と説明するのではなく「三角を作る」と子どもたちが分かりやすいよう表現を工夫し話していたこと。
その先輩の姿を見て「相手に合わせた伝え方」の大切さを意識するようになり、その学びが今でもコミュニケーションの軸になっていると吉清水さんは振り返った。

■学びの道しるべ
高校生時代は、同級生と話す機会も少なく、昼は一人で弁当を食べていた。「コウヘイ」と教室内で呼ばれても、同名の同級生を指していることがほとんど。他人とコミュニケーションを取る機会は限定的だった。
そうした生活も、大学入学後初めて取り組んだボランティアを契機に一変。学びを授けてくれた先輩を慕い、その後も一緒にさまざまな活動を行った。
2つ目のボランティアでは、盛岡市開運橋の花壇清掃に参加。作業をしながら初めて会う人ともたくさん会話を重ね、コミュニケーション力を養う良い機会となった。
こうした単発での活動の傍ら、継続的なものとして国立岩手山青少年交流の家でのボランティアにも参加した。ここでは、子どもたちを対象に自然の中での子ども食堂や防災意識啓発などの活動に積極的に取り組んだ。その姿勢が評価された結果、同施設の推薦を受けて(独)国立青少年教育振興機構が主催する「ボラミックスキャンプ」への参加が決定。全国の国立青少年教育施設ボランティアが集まる場で、自施設の課題や解決策を考えたり、他施設ボランティアと意見を交わしたりすることを通じ、企画の作り方や人を引き付ける話し方などのテクニックを学ぶことができた。

■成長の道のり
「面白いお兄さんでありたいんですよね」と、吉清水さんは子どもたちとのコミュニケーションを念頭に話す。ボランティア企画を通して、せっかくなら子どもたちに楽しんでもらいたい。一方で盛り上がり過ぎると子どもたちの注意が散漫になってしまうこともある。そうした中、怒らずに面白く興味を持ってもらえるよう、例えば「あきじかん(安全・きれいに使う・自主的に、など)」のように約束事を頭文字にして合言葉で伝えるすべは、ボランティア経験を通じて身に付けたものだ。
人と話すことが少なかった高校生時代。それから大学に入り、ボランティア活動を通じて「相手に合わせた伝え方」や「興味を持ってもらえる表現方法」を身に付け、コミュニケーション力を大きく伸ばすことができた。普段の学校生活やアルバイトでも「ボランティア経験が生き過ぎている」と吉清水さんは充実した表情で前を見つめる。将来の目標は高校教員。この夏は二週間にわたる教育実習もこなした。至宝の学びを教え子に「伝える」時は近い。

■朝活はスクールガード
小岩井自治会の山本美喜子(やまもとみきこ)副会長は、吉清水さんから最初にスクールガードの相談を受けた人物。「もう少し活動がしたい」「朝の時間が空いてるな」と考えた吉清水さんが、幼少期から交流のある山本副会長に声を掛けた。この話を受けたとき、とても驚いたという山本副会長。自身もスクールガードとして活動しているため「こうした若い人たちの参加が広まってくれたら」と期待を膨らませる。
市のスクールガードボランティアの数は、8月末現在で246人。年々減少していることが課題だ。吉清水さんは今年7月「学生つながり推進局」という学生団体の立ち上げに加わり、スクールガードなどのボランティア活動と、何かを始めたいと考えている学生をつなぎ合わせる取り組みを始めた。さまざまな社会課題の解決に向けた糸口を探りながら、今日もいつもの道で子どもたちを見守る。

スクールガードのボランティアを随時募集しています。

問い合わせ:学校教育指導課
【電話】656-6585

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