文字サイズ
自治体の皆さまへ

けものとともに生きる

2/30

岩手県滝沢市

里山ー。
人々が暮らすまちのすぐ隣では、たくさんのけものたちが暮らしている。
ひととけものがともに生きるために、ひとができることを確かめる。

■「ひと」と「けもの」
113万2千円。これは、令和4年度に発生したカラスやイノシシなどの鳥獣による市内の農作物被害の金額です。毎年夏から秋にかけて、デントコーンなどの飼料用作物の他、スイカやサツマイモなどの畑作物が食い荒らされるなどし、被害が及んでいます。
また、県内ではクマによる人身被害も発生しています。令和4年度は、15の市町村で24人が山菜採りや散歩の最中に襲われるなどして被害に遭いました。
市内でも本年度、クマとイノシシの目撃情報が増加しています。7月20日時点ですでに53件となっており、前年を上回る見込みです。

▽市農林課資料と「ツキノワグマによる人身被害」(岩手県.2023年)から作成

■けものを「知る」
人的・物的被害を抑えるために、私たち「ひと」ができることは何か。それをひもとく道のりは、鳥獣たちの生態を「知る」ことから始まります。ここからは、被害要因の中でも多数を占めるクマとイノシシについて、掘り下げていきます。

(1)クマ
県内に生息するクマは、ツキノワグマという種類です。春、冬眠から目覚めたクマは、山菜などの草本類を食べながら暮らします。クマは一般的に冬眠中に出産するため、春先は母グマが子グマを引き連れて行動します。夏にかけては繁殖期を迎え、雄が雌を求めて行動圏を拡大。秋には飽食期となり、冬眠に備えて多くの餌を探すため、行動が活発化します。
基本的にクマはひとを避ける動物ですが、突発的に出会うと、防御的な攻撃をしてくる場合があります。足も速く木登りも得意なため、近くにクマがいることに気付いたときは急に逃げようとせず、まずは「落ち着くこと」が肝心です。クマが気付いて威嚇突進(本気の攻撃ではなく、すぐ立ち止まっては引き返す行動)を見せる場合がありますが、背中を見せて逃げ出したりすると、クマは逃走する相手を追い掛ける傾向があるため危険です。クマを見ながらゆっくり後退するなど、落ち着いて距離を取りましょう(※1)。

(2)イノシシ
市内では令和元年度頃から目撃されるようになった動物で、二ホンイノシシと呼ばれる亜種の一種が生息しています。スイカやサツマイモの食害、牧草地の掘り返し、水田の踏み荒らしなどの被害が顕著である他、豚熱ウイルスを媒介することで養豚産業に大きな影響を与えることがあります。
イノシシは、子を連れた雌の成獣、単独の雄の成獣などの単位で行動します。特定の縄張りを持たないため、複数の群れが同一地域に生息することもあり、基本的には夜間や朝夕の薄暗い時間帯に活動しますが、危険がないことが分かると日中でも活発化します(※2)。

■けものから「守る」
日常生活でできることには何があるでしょうか。予防策としては「残飯を庭に捨てない」「ごみを外に置かない」「トウガラシ成分を活用した忌避剤を使用する」などし、人家へ寄り付かせないことが有効です。農作物を守るためには、市の補助制度もある「電気柵の設置」や、木柱とテグスによる「侵入防止柵の自作設置」も効果的。定期的な刈り払いで見通しの良い環境を維持しておくことも重要です。

■けものと「生きる」
市では、クマの目撃情報が寄せられた場合、市農林課などの関係課、市教育委員会、警察、猟友会と協力体制を築き、状況に応じて小中学校や幼稚園・保育園などの教育保育施設へ連絡をする他、防災行政無線での情報提供も行っています。無線で放送された内容は、市の公式アプリ「滝沢NAVI」でも通知されます。聞き逃した場合でも確認することができるため便利です。また、県が実施する「いわてモバイルメール」では、同様の情報を電子メールで受信することができます。さまざまな手段で迅速に目撃情報を受け取ることで、不要な接触の回避につながります。
ひとがけものの存在を認めながら、暮らすことー。
ひとが恩恵を受ける「自然」の中には、けものたちの暮らしも存在します。ひとが自らの命やなりわいを守り、自然と共生するためには、彼らのことを理解し、過度な接触が発生しないよう普段から工夫することが求められます。

※1「クマ類の出没対応マニュアル-改訂版-」(環境省自然保護局.2021年)
※2「第二種特定鳥獣管理計画作成のためのガイドライン(イノシシ編)改訂版」(環境省.2021年)

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU