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そうだったのか!がん専門医による抗がん剤のお話〈第5回〉

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島根県奥出雲町

■[分子標的薬で狙い撃ち]
今回が連載5回目、『分子標的薬』のお話です。その前に従来の抗がん剤がなぜ、がんに効くのか説明しなければなりません。従来の抗がん剤は細胞分裂を阻害する働きがあります。以前、がんはもともと正常な自分の細胞が変化したものと説明しました。がんという組織は正常な細胞と比べて細胞分裂が活発で、細胞の増殖が速いというのが特徴です。その部分に着目し、細胞分裂を抑えてしまおうというのが従来の抗がん剤です。そうすると正常な組織の中でも細胞増殖の活発なところ、例えば毛根の細胞だとか、腸の粘膜の細胞だとか、白血球といわれる免疫細胞などはやはりダメージを受けてしまいます。そのために抜け毛が出たり、下痢をしてしまったり、栄養状態が悪くなったり、感染症を起こしやすくなったりするのですね。
一方、『分子標的薬』は正常な細胞には存在せず、がん細胞だけがもつ特徴的な『標的』を狙い撃ちするような治療です。例えるなら、従来の抗がん剤は絨毯(じゅうたん)爆撃で、『分子標的薬』はスナイパーによる狙撃のようなものです。スナイパーによる狙撃であれば正常な組織へのダメージも少ないはずですよね。そのとおりで、『分子標的薬』には従来の抗がん剤で見られる吐き気、おう吐、抜け毛、けん怠感などの副作用が非常に少ないか、全く見られないことも多いのです。薬によっては下痢を起こしやすいものや間質性肺炎という特殊な肺炎を起こすものなど、副作用が全くないというわけではないのですが、体への負担が軽くなるのは確かです。
近年、この分子標的薬の進化が目覚ましく、それに伴い治療成績も向上しています。悪性リンパ腫に用いられるリツキシマブというお薬は、一部のリンパ腫の根治率を10-20%も底上げしましたし、昔は骨髄移植でしか治せなかった慢性骨髄性白血病という病気はなんと内服薬で治る時代になってきました。この進化は血液のがんに留まらず、『分子標的薬』は多くのがん種(つまり肺がんや乳がん、大腸がんなど色々ながん)に用いられるようになっています。次回は『免疫チェックポイント阻害薬』のお話をします。

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