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〈第6回〉そうだったのか!がん専門医による抗がん剤のお話

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島根県奥出雲町

■内科 診療部長 池尻文良(いけじりふみよし)

◆[免疫チェックポイント阻害剤]
今回は第6回目の連載です。今流行りの『免疫チェックポイント阻害薬』についてお話します。みなさん2018年のノーベル医学生理学賞を日本人が受賞したのを覚えているでしょうか?京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)先生が『免疫システムを利用する新たながん治療法の発見』を理由に受賞されました。簡単に説明しましょう。先生は免疫細胞の一種であるTリンパ球にPD-1と呼ばれるタンパク質が存在することを発見しました。しばらくその機能についてはわからなかったのですが、7年間の研究で免疫の働きを抑える作用、つまり免疫の「ブレーキ」の役割があることを突き止めたそうです。さらに、なんと、がん細胞はこの「ブレーキ」の仕組みを利用して免疫による攻撃から逃れていることがわかったのです。
私たちの体の中では健康な人でもがん細胞が絶えず発生しています。それでも多くの人が、がんを発症しないのは、すぐに免疫細胞が発見して攻撃してくれるからです。しかし、がん細胞も巧みです。本来、免疫反応が暴走しないように備わっている「ブレーキ」をうまく利用し、自分を攻撃しないようにしてもらうのです。あたかもお役人に賄賂を渡して悪事を見逃してもらうかのように!
差し詰めPD-1は免疫細胞(お役人)が、がん細胞から賄賂をもらうときの手のようなものです。このPD-1の作用をうまくブロックしてやれば、お役人が賄賂をもらうことなく、適切に働いてがん細胞を取り締まってくれるはずです。この方法を利用して先生は新たながん治療薬の開発に至りました。今までは(1)手術で取り除くか、(2)放射線でやっつけるか、(3)抗がん剤で絨毯(じゅうたん)爆撃をするか、(4)分子標的薬で狙撃するか、いずれかの方法が、がん治療の主流でした。そこに新たに免疫を調整することで、がん治療につながる方法を発見したのです。先生と小野薬品が共同で開発したその新薬の効果は絶大でした。しかし、紙面が足りなくなったので効果については次回説明します。
おたのしみに!

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