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〈第7回〉そうだったのか!がん専門医による抗がん剤のお話

22/29

島根県奥出雲町

内科 診療部長 池尻文良(いけじりふみよし)

■[免疫チェックポイント阻害剤の効果]
連載も第7回目、今回は『免疫チェックポイント阻害薬』の効果についてお話します。商品名でオプジーボ、キイトルーダ、テセントリク、ヤーボイなどのお薬があります。日本で最初に承認されたのは悪性黒色腫(メラノーマ)といわれる難治性の皮膚がんに対するオプジーボでした。メラノーマはほとんど抗がん剤が効かない腫瘍として有名で、あまり使える薬剤がありません。ダカルバジンという強い副作用のある抗がん剤やインターフェロンなどが治療に用いられていましたが、その効果は限定的でした。そのダカルバジンとオプジーボを比較する試験が行われたところ、手術が施行できない進行したメラノーマの患者さんにおいて、1年後の生存率がダカルバジンは42%だったのに対し、オプジーボは73%と治療成績が大きく改善したのです。またダカルバジンは非常に吐き気が強く出る薬剤で副作用も強いのですが、オプジーボは吐き気やけん怠感などの副作用がほとんど見られませんでした。
これを皮切りに様々ながんで免疫チェックポイント阻害薬の効果が調べられました。すると、今ではメラノーマに限らず、肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、咽頭がんや喉頭がんなどの頭頚(けい)部のがん、胃がん、食道がん、一部の大腸がんや乳がん、原発不明がん、尿路上皮がん、子宮体がん、子宮頸(けい)がん、肝臓がんなどにも効果があることが分かり、ここに挙げたような様々ながんに用いられています。ただし、治療をした患者さんの全員に効くような薬ではありません。患者さんの一部にしか効果は見られないものの、一度効果が見られると今までの抗がん剤では見られなかったような劇的な腫瘍の縮小効果を見たり、効果が何年にも渡って長く持続したりするなどの傾向がみられました。今までは1年生きられなかったような肺がんの患者さんが5年も10年も治療を続けられる、といったケースが出てきたのです。また手前味噌(みそ)ですが、私が治療した50代の胃がん患者さんのお話をさせてください。…と思ったら紙面が尽きてしまいました。次回は私が経験した症例と免疫チェックポイント阻害薬の副作用についてお話します。

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