◆女性も男性も 対等な立場、条件で
津村:私には子どもが3人いて、母親としての面と働く者としての面のそれぞれの思いがあります。子どものことで仕事を休まないといけなくて、職場の人に迷惑をかけて心苦しくなることが誰でもあるとも思います。私の職場は医療・介護・福祉分野なんですが、子どものことで急に休むことになっても、柔軟な対応をしていただいてますし、事業所としてもフォローできる環境を整えています。また、家庭の事情でフルタイムで働けない人もいますので、できるだけ職員の事情を考慮した勤務体系にしています。パートタイム勤務にしても一律で勤務時間帯が決まっているわけでなく、事情を聞き、勤務時間を区切ったりしています。今はやはりライフスタイルが多様化していて、そのライフスタイルに合わせて働けるような雇用体制にしないと、働く人材も集まらなくなっているところもあります。さらに女性だから、男性だからとかの意識を持たないことも重要だと感じていて、女性も男性も働きやすい職場にしていかないと、女性の活躍にもならないというか、みんながそういった意識を持って進んでいくということが大事だと実感しています。また、安来にいるとどんな仕事に就けてどんな生活ができるとか子どもたちにイメージしてもらう機会が増えるといいと感じています。そこを行政と民間が一緒になって取り組めるとまた変わってくるかなと思っています。
市長:おっしゃるとおりで、安来にどんな企業があって、どんな思いで仕事をしているか知らない子どもたちが多いように感じます。そのため、安来の企業ガイドブックを作成し、移住・定住や就職のセミナー会場で配布しました。また、安来にサテライトキャンパスがある島根県立大学と協働で高大連携型キャリア教育プログラムを実施しています。これは、地元の高校生が「仕事のつながり」から「社会のひろがり」を学び、自分の未来と地域の未来を同時に考える講座で、地元企業で働く社会人から、その仕事を選んだ理由ややりがいなどについて対話するプログラムもあります。このような取り組みがさらに広がるといいと思ってます。
白尾:女性活躍というところで大学と一緒に研究したり、自治体と協働で取り組んだりしています。安来市に限らず、全国に共通する部分ですが、女性が活躍して働くために必要なものはやはり行政と企業と家庭、その3つのどれが欠けても駄目だと思ってます。その中で一番日本が弱いのが家庭の部分で、日本は無意識の偏見があるとすごく感じています。育児だったり介護だったり色んなものを女性が担っている現状が日本では当たり前になっている。外国に比べて夫婦間のコミュニケーションが足りないし、特に男性のサポートが足りないと思います。それを言うと逆差別になるんじゃないかと言われることがありますが、そうじゃない。世界と比べて日本は女性の方が地位が低いんです。はっきり言って。
市長:国別のジェンダーギャップ指数(下の欄参照)が毎年公表されていますが、日本の順位は下から数えた方が早く、主要先進国(G7)の中でも断トツの最下位ですよね。
白尾:そうなんです。男女共同参画とは、基本的に同じ境遇下で、自分の能力を発揮したい人が発揮できることであって、日本はそこがまだまだできていない。そこの意識すらまだ追いついてない状態です。まずその意識改革を安来市のような規模の自治体から取り組んでいく。女性たちの力を結集して、何かいい施策を考えてそれを推進してくのも一つの方法かなと思っています。
市長:意識改革にはまず市役所の職員からと考え、令和3年8月に私自ら「イクボス宣言」をしました。職員のワーク・ライフ・バランスを考慮して、全ての職員が育児や介護、地域活動に積極的に参加できるよう取り組むと同時に、市内の企業等に「イクボス」の取り組みと精神を広げることが目的です。私だけで市役所がまわってるわけでも、市役所だけで安来がまわっているわけでもありません。企業や地域、学校など「オールやすぎ」で意識改革を始めとした女性が活躍できるまちづくりにも取り組んでいく必要があります。
白尾:意識改革にしても行政の取り組みには特効薬はなくて、地道にやっていくしかない。ソフト産業誘致も一朝一夕でできるもんじゃない。しっかり分析して安来市だからこそできる、最初に話した地の利を生かした施策を一歩一歩進めていくしかないです。
市長:私はこれまで「オールやすぎ」による「次の世代につなげる安来市づくり」を掲げて各種施策を進めてきました。これからも行政だけで決めるのではなく、皆さんにも色々考えていただいて意見をいただき、それを取り入れてやっていこうと考えています。今日皆さんからいただいた話一つ一つを参考にさせていただきたいと思います。
▽ジェンダーギャップ指数とは
世界経済フォーラムが公表する世界各国の男女平等の度合いを経済・教育・健康・政治の分野から数値化したもの
「1」が男女完全平等で「0」に近い数値になるほど不平等であることを表す。
2023年国別ランキングでは、1位のアイスランドの「0.912」に対し、日本は「0.647」と146カ国中125位と過去最低の順位(2022年は116位)となった。
日本は教育(0.997)と健康(0.973)は世界トップクラスなのに対し、政治参画(0.057)と経済参画(0.561)は他国と比べて著しく低い。
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