■やるなら毎日
景山俊太郎(以下、景山):わたしたちしまね子ども食堂ネットワーク事務局は、令和3年度から島根県の委託を受けて、子ども食堂関係者の相談対応をしています。全国的に子ども食堂は年々増えています。実は認定NPO法人全国こども食堂支援センターむすびえ(以下、「むすびえ」)の令和2年の調査で、島根県内の子ども食堂は18ヵ所で全国最下位でした。翌年度からサポート事業が始まり、令和4年度末には74ヵ所、令和5年度末は93ヵ所、今年度は11月末で119ヵ所の食堂が活動されています。
梶谷友貴(以下、梶谷):令和5年11月に板垣さんから事務局のホームページに問い合わせいただいたことから支援を開始しました。そこから安来市社会福祉協議会とも関わりを持って、ボランティア募集や助成金申請について対応しました。
全国でも常設型の子ども食堂は2%しかなく、島根県内にはありませんでした。事務局にも常設型に対するノウハウがなく、独自に調べたり、むすびえに情報提供いただいたりして、板垣さんにつなげるという形でした。むすびえから、常設型の食堂に、夜、子どもが変質者に追いかけられたが、子ども食堂へ逃げ込めたというお話を聞きました。一方で、店舗が子ども食堂としてふさわしくないのではという意見も一定数あると伺いました。
景山:対策として「ごはんだよ」でもされていますが、出入口や店舗内の空間をどちらのお客さんかで分けるという工夫が重要だと情報提供しました。そういった工夫や安来市社会福祉協議会から食堂開設立ち上げの資金補助などを利用されて無事開設に至っています。
板垣:やるなら毎日したいし、夏休みなどの長期休みにも対応したい。動き出せたのが令和5年11月だったので春休みには間に合いませんでしたが、7月17日にオープンしました。約5ヶ月が過ぎ、12月10日までで延べ2600人に利用いただきました。
開始前は困っている家庭はあるのだろうけど、実際そんなに来られるかと心配をしていました。始まってみるとメディアなどの影響で、ファミレス感覚でいろんな人がこられました。最近はだいぶ落ち着いてきて、子ども食堂が必要な人が毎日こられるようになってきたと感じています。
市長:「ごはんだよ」に行ったとき、板垣さんがずっと皆さんに話しかけておられましたね。特にお母さんに話しかけてあげられていて、あぁいいなと思ったんです。声がけすることで信頼関係ができていくということですね。なかなか出来ないことだと思います。
板垣:だんだん慣れてきてもらえて、お手伝いもしてくれるし、「ただいま」と言って食堂に来てくれる子もいます。
子ども食堂を利用して、若干、金銭的に余裕ができたようで、「子どもの誕生日に今までショートケーキしか買えなかったけど、今年は、一番ちっちゃいけどホールケーキが買えるようになりました」と聞いて、やっていて本当によかったなと思いました。
■続けるために休みます
板垣:毎日やると決めて始めたんですけど、利用者さんから「お盆とかお正月は、休んでください」と言われました。ずっと食堂をしていて、途中で倒れられたら私たち食べられなくなりますと。配膳は私たち夫婦と娘、ほかにボランティア1人で対応しています。食堂の開催時間は夕食の時間帯で毎日なので、なかなかスタッフが集まりません。スタッフは常に募集しています。
食堂を休んでいる間の食事をどうするかが課題で、実はフードバンクもやろうかなと考えています。お中元やお歳暮などの頂き物で、食べきれない素麺などありますよね。それらを子ども食堂に寄附してもらい、食堂が休みの間、利用者さんに渡して家庭で食べてもらいます。誰にでも配るわけにならないので、登録型のフードバンクを計画しています。
松田:お盆や年末年始は夏休みや冬休みと重なるので、食堂がなかったら一食も食べられない可能性があるのではと、やっぱり不安なんですね。お盆はボランティアスタッフがいないけど、ドアベルを鳴らすと、当社のスタッフがお弁当を渡すようにしていました。今後はお弁当かフードバンクかの2通りを考えています。食堂の休みに来づらい人がないような仕組みにしたいと思っています。
僕らの社内では「今0歳の子が20歳になるまでは絶対続けよう」を目標にしています。開設して半年、ボランティアスタッフも無理していたし、調理スタッフも無理していたところはやっぱりあって、苦労もありましたがやっと慣れてきましたね。
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