松江市長 上定昭仁(うえさだあきひと)
小泉八雲記念館 館長 島根県立大学短期大学部名誉教授 小泉凡(こいずみぼん)
株式会社ぐるなび 松江市地域活性化起業人 寺島奈実(てらしまなみ)
今年秋から始まるNHK連続テレビ小説は、小泉八雲の妻小泉セツをモデルとした「ばけばけ」です!
物語の舞台はもちろん、この松江。今年は松江に全国から注目が集まること間違いありません。「ばけばけ」と松江を盛り上げていく一年にしていきましょう!
そこで年頭にあたり、上定市長が、小泉八雲記念館の小泉凡館長、(株)ぐるなびの寺島奈実さんとともに、小泉八雲・セツを地域の文化資源としてまちづくりに生かす取り組みについて語り合いました。
〔小泉凡プロフィール〕
1961年東京生まれ。成城大学・同大学院で民俗学を専攻後、1987年に松江へ赴任。妖怪、怪談を切り口に、文化資源を発掘し観光・文化創造に生かす実践活動や、小泉八雲の「オープン・マインド」を社会に生かすプロジェクトを展開。小泉八雲の曾孫。
〔寺島奈実プロフィール〕
2016年2月、(株)ぐるなび入社。2022年12月、総務省「企業人材派遣制度」により、(株)ぐるなびから松江市に派遣。ぐるなびの持つノウハウなどを活用し、特産品のブランディングや商品開発など、松江の魅力・価値の向上に取り組んでいる。
〔小泉八雲〕
1850年ギリシアで生まれ、19歳の時にアメリカに渡り新聞記者として活躍。1890年、39歳の時に来日。同年8月に、英語教師として松江に赴任。松江の暮らしの中で出会った「古き良き日本」、セツから聴いた多くの不思議な話を元に多くの著作を著した。
〔小泉セツ〕
1868年松江藩の家臣小泉家に生まれる。23歳の時に松江の英語教師として赴任した八雲と夫婦となり、三男一女をもうける。物語が好きで、幼い頃から聴いて育った昔話や民話、伝説などを八雲に語り聞かせ、八雲の著作を支えた。
■祝・ドラマ制作決定
小泉:「ばけばけ」制作発表があったときは、非常に驚き、うれしかったのと、これからどうなっていくんだろうという不安とドキドキ感がありました。記念館や旧居に来てくださる人も増えると思いますし、松江のまち、八雲ゆかりの地、山陰全体が賑わう期待感を持っています。
上定:小泉八雲没後また『怪談』初版出版から120年の今年、しかも、記念館でセツの企画展が始まるタイミングを捉えての制作発表となりました。ドラマの中で、八雲・セツと松江がどのように描かれるのか、ワクワクしています。このドラマでの盛り上がりを一過性のものにせず、松江の魅力を全国・世界に発信するきっかけにしていかなければという意味で、身が引き締まる思いです。
寺島:制作発表を受けたときは、ちょうど『怪談』出版120年を記念した「怪談グルメ」のプレスリリースをしようという時で、怪談グルメがより注目されるのではとかなり喜びました。地元横浜の友人からも連絡が来て、これは全国に松江の名をとどろかせるチャンスがきたぞと。ドラマの制作発表があったことで、事業者さんもこれまで以上に怪談グルメに興味を持ってくださっていると思います。
■八雲・セツのココに注目!
上定:八雲とセツが生きた時代は、「ばけばけ」に表されるとおり、激動・変革のときでした。日本の西洋化が進み、海外や新しいものに対するマインドがオープンになっていく潮目だったはずです。とは言え、当時、国際結婚や再婚には相当高いハードルがあったでしょうし、松江という伝統的な土地でそれが受け入れられたことを意義深く感じます。SDGsに位置付けられる多様性の受け入れや、人種差別の解決に向けた手がかりになるのではないでしょうか。
寺島:八雲とセツのオープンマインドの精神は当時としては本当に先進的だったと思います。八雲は各地を回り、いろいろな文化を受け入れながら日本にやってきましたが、セツは松江にいながらその感覚を持っていたのがすごいなと思います。現代の多様性は「自分はこうです」と主張してもいい空気がありますが、二人から感じるのは主張より受け入れるほう。八雲は日本文化の理解に努め、セツも二人だけで通じるヘルン言葉で話したり、お互いを尊重しながら受け入れています。ドラマでどう描かれるか楽しみですね。
小泉:今、世界でも多くの人が、対立とか戦争とかで人間中心主義にちょっと疑問や矛盾、行き詰まりを感じていると思います。八雲の怪談作品は人と人を、東洋と西洋を、生きてる人と亡くなった人を、目に見える世界と見えない世界をつなげてくれます。そういうつながりの感覚が得られることが、今必要とされていると思います。二人ともいろいろな困難を経験し、それを乗り越えて前向きに、オープンマインドで生きた。その二人の生き方が、今の時代に注目されるといいなと思います。
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