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新春対談 小泉八雲・セツ×松江市~文化資源としての“八雲”を生かす~(2)

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島根県松江市 クリエイティブ・コモンズ

■文化資源として生かす
小泉:文学は今「終わったコンテンツ」などとやゆされることがありますが、決してそうではない。「文化資源」という考え方、着眼点が大事だと思います。今まで蓄積されてきた文化に、現代に合う形で光を当ててプロデュースすることで、魅力的な観光資源が出来上ると思うんですね。一つは『怪談』がそうです。八雲が『怪談』を書いたのは東京ですが、「雪女」も「ろくろ首」も、みんな松江で妖怪の存在を知るわけです。だから松江は『怪談』のふるさとです。2008年からやっている「松江ゴーストツアー」は盛況で予約が取れない状況になってきていますし、これに合わせて遠くから松江に旅してくださる方がたくさんいらっしゃいます。
上定:私も2018年にゴーストツアーに参加して、松江にこんな魅力的なコンテンツがあるんだと知りました。本市としても、ツアーの回数を増やせるよう、凡先生にもご協力いただき「語り部」の養成に取り組んでいます。
小泉:佐野史郎さん、山本恭司さんと共に各地で開催している「小泉八雲朗読のしらべ」でもお芝居や音楽、八雲文学が好きな人が融合してきた気がしていて、広がりを感じています。
上定:ニューヨークに赴任していた時に「朗読のしらべ」を鑑賞しましたが、客席はニューヨーカーで満員で拍手も鳴り止まず、海外での訴求力を実感しました。八雲の文筆を通じて、日本や松江の魅力を発信する素晴らしいパフォーマンスであり、これからもサポートさせていただきます。
小泉:2009年から「オープン・マインド・オブ・ラフカディオ・ハーンプロジェクト」を世界のゆかりの地でやってきました。これによって、八雲の「オープンマインド」が世界的に注目されるようになって、怪談作家としてだけでなく、新しい切り口で現代社会にとって八雲の思考が大切なんだと認められるようになったと思います。これからもこういった形のないものを文化資源あるいは観光資源として捉えて、特に松江から実践していくことを続けたいですね。
寺島:私は市長から、松江は国際文化観光都市で八雲の功績が大きいという話を聞いて、八雲に注目しました。例えば道後温泉に行くと「坊っちゃん」。松江も意識して歩くと八雲がいっぱいですが、観光客に映っていないと思っていたんです。「坊っちゃん」みたいに作品を軸に商品展開できないかと始まったのが「怪談グルメ」の商品づくりです。2023年夏に凡先生にお話を持っていって「面白い、ぜひやってほしい」と言っていただいて、和菓子や日本酒・工芸品とのコラボ、八雲が遺した「クレオール料理本」の再現料理などをリリースできました。「思ひ出の記」の出版イベントと同時にマルシェを開催できたこともすごくよかったです。商品はお土産屋さんに絶賛売り込み中です!
小泉:寺島さんがプロデュースした商品は本当に面白くて、魅力的で、まさに『怪談』って文化資源なんだなと感じます。
寺島:事業者さんもお忙しい中、面白がってやってくれたのでありがたかったです。今後も商品開発にどんどんチャレンジしてほしいですね。
小泉:皆さん遊び心を持ってらしたんですね。
上定:小泉八雲没後・『怪談』出版120年という節目を、市民みんなで楽しむことができています。寺島さんには、八雲を起点にしたアイデアで松江を盛り上げてくださり感謝しています。そして、120年がゴールではなくスタートになったと感じているところです。

■ドラマ放送をきっかけに
小泉:市民の方にはもう一回、八雲とセツに興味を持っていただければと思っています。朝ドラは全国で放映され、遅れて海外でも見ることができます。小泉八雲、あるいは八雲文学への関心が全国、世界へ広がっていくことを期待したいです。一過性で終わらせないように、ドラマが終わっても魅力を発信し続けていかないと。
寺島:私、駅にドラマの応援メッセージを書き込む芳一パネルを置きたいと思っています。本当の話だと、和尚が耳にお経を書き忘れてちぎられてしまいますが、耳にも書いて芳一を救いましょうというコンセプトで。市民が参加できるものを置いて、市民も含めたプロモーションをしていくことが大事だと思います。あとは、ゆかりの地を巡る「ばけばけ」タクシーとか、国宝松江城マラソンに怪談コスチュームで走るファンランをつくっても面白いかなと。堀川遊覧船も怪談ラッピングとか怪談が聞けるとか、怪談キャラが乗っててもいい。船頭さんがのっぺらぼうだったとか(笑い)。こういうアイデアも、本当に雑談から生まれてるんですよね。みんなでアイデアを持ち寄りフランクに話せる場を設けて、新しい観光コンテンツを作ることができればと思っています。
上定:民間でも若手を中心に何かやりたいというムーブメントが聞こえてきていて、「オール松江」でイベント性の高いものを創り出したいですね。そのため、12月に「小泉八雲・セツのドラマをイカしてバケる松江推進協議会」を立ち上げたので、官民一体となって取り組んでまいります。春にはドラマの撮影も始まります。市民のみなさんには、「ばけばけ」を身近な存在としてイベントなどに奮って参加ください。
小泉:私はちょっとこの辺でブラッシュアップしていきたいと思っています。例えばゴーストツアーの多言語開催。それから、旧居の全面公開、そして記念館と旧居をより一層一体化させていくことも近い将来実現できればと思います。
上定:熊本市長に、八雲ゆかりの地同士連携しませんか、と提案したところから、その第一弾として、昨年9月26日の八雲の命日「八雲忌」に、熊本と松江の小泉八雲旧居をオンラインで結んで、怪談朗読会を初めて開催しました。今後、熊本市と松江市の交流を広げるべく協定を結ぶといったことも検討してまいります。
寺島:熊本、神戸、焼津、新宿など、八雲ゆかりの地とのコラボもいいですよね。
小泉:「ばけばけ」が始まると決まってから、ゆかりの地との連携が非常に深まってきています。ゆかりの地ではないですが、新潟県南魚沼市にある池田記念美術館には日本有数の八雲コレクションがあります。焼津にも小泉八雲記念館があり、新宿歴史博物館にも秘蔵の八雲資料がありますので、関係のある博物館同士の連携も深めていければ。例えば展示会も巡回させていくとか、そういったことを積極的にやっていければと思っています。

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