1月号に引き続き、昭和54年に市指定文化財になった勝地半紙(かちじばんし)について紹介します。
地域おこし協力隊 後藤響介
■甑(こしき)と大蛇
毎年12月初旬頃から、1年分の原料である楮(こうぞ)を収穫し、蒸して皮を剥ぎ、干す「そどり」という作業が行われます。この楮を蒸す際に上から被せる大きな桶が甑(こしき)です。
風の国の敷地内にある佐々木さんの工房の甑は木製で、直径約1・4m、高さ約1・7mの釣り鐘型をしています。先代から譲り受けたもので、明治時代から今まで約120年もの間、現役で使われ続けているものは日本全国を探してもここだけの大変貴重なものと伺いました。
石見神楽の演目「八岐大蛇」で登場する大蛇が3段とぐろを巻いた状態を「コシキ」と呼びますが、実はこの楮の蒸し器である「甑」に由来しているそうです。かつて石見地方各地に多くいた紙漉(す)き職人の使用する道具が、神楽と結びついて名称として残ったことは、石見地方ならではの文化的つながりを感じました。その貴重性と文化的背景から、佐々木さんの工房の甑が、日本遺産「神々や鬼たちが躍動する神話の世界〜石見地域で伝承される神楽〜」の構成要素の一つとして認められています。
■勝地半紙のこれから
佐々木さんご夫妻は、6代目として受け継いだ勝地半紙の伝統を未来へ残すため、日々工夫を重ね、挑戦しています。楮の栽培から紙漉きに至るまで一貫して取り組む一方、現代の生活に寄り添った使い方を模索しています。その一環として、和紙や半紙を活用した作品制作や展示会の開催にも力を注いでいます。また、紙漉きやものづくりの体験に興味を持つ外国人観光客を受け入れることもあり、認知度は広がりを見せています。
この記事を通じて、江津市の皆さまが地元の伝統工芸品である勝地半紙について改めて関心を寄せていただければ幸いです。
2016年2月号のかわらばんでも勝地半紙を特集していますので、ご興味のある方はぜひ2次元コード(本紙掲載)からPDF版をご覧ください。
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