今月号の表紙になった満月は、古今東西で親しまれ、様々な歌や芸術作品があります。
例えば、平安時代の貴族・藤原道長は「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 虧(かけ)たることも なしと思へば」という有名な歌を詠(よ)みました。現代風に意訳すると、「この世の中はまさに俺のもの。満月が欠けてないように完璧!」といった内容です。
実にイケイケなこの歌は、道長の部下でありながら、なかなかの皮肉屋でもあった藤原実資(さねすけ)の日記だけに登場します。この時、道長は「どう思う?」とばかりに、実資に返歌を求めますが、実資はこの歌を他の貴族と吟じることで、肯定も否定もせず上手くかわしました。
道長は自身の日記に、この歌を書き残していません。2人の微妙な関係性に加え、やり込められてしまった気恥かしさもあったのかもしれませんね。
満月の撮影後、コンビニで買った月餅を食べながら、人間臭い平安貴族たちの姿を想像した一夜でした。(大久保)
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