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雲南病院だより

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島根県雲南市

■「気になる顎の痛みと音」
歯科口腔外科 診療科部長 小池 尚史(こいけたかし)

口を開け閉めする時に顎がカクカクと鳴る、口を大きく開けられない、顎の関節やその周りの筋肉が痛い、このような症状が慢性的にある場合、顎関節症(がくかんせつしょう)の可能性があります。顎関節症の症状はさまざまですが、放っておくと頭痛や肩こり、耳鳴りなどの原因となることもあります。痛みなどの症状がなければ経過観察となる場合も多いですが、日常生活に支障を来すような場合には治療が必要です。今回は顎関節の仕組みと顎関節症の病態についてお話しします。

◯顎関節の構造と機能とは?
顎関節は下顎(かがく)を動かすための関節で、耳の穴のすぐ前にあり、頭の骨のくぼみ(側頭骨の下顎窩(かがくか))と下顎の突起(下顎骨の下顎頭(かがくとう))から構成されています。耳の前に指を当てて、大きく口を開けると動く箇所が顎関節です。下顎頭と下顎窩の間には、関節円板というクッションがあり、関節の動きをスムーズにし、圧力を吸収するという役割があります。下顎を動かしているのは、側頭筋(そくとうきん)や咬筋(こうきん)など咀嚼筋(そしゃくきん)と呼ばれる筋肉です。顎関節はこのような多くの構造物が協働することにより、話したり食べたりなどの複雑な運動ができるようになっています。

◎顎関節の構造
※詳細は広報紙14ページをご覧ください。

◯顎関節症とはどのような病気か?
顎関節症とは、開口時痛(口を開けると痛い)、開口障害(口が開かない)、関節雑音(口を開け閉めすると音が鳴る)を主症状とする顎の病気です。顎関節症は5つのタイプに分けられます。
(1)1型(筋肉の異常)
主に顎の筋肉の痛みで、いわゆる「筋肉痛」の状態です。咬筋や側頭筋に生じることが多く、頭痛を来すこともあります。筋肉のマッサージや顎の安静で治療することが多く、痛みの程度に応じて投薬も行います。
(2)2型(関節靱帯の異常)
関節靱帯の痛みで、いわゆる「顎の捻挫」の状態です。無理な開口をしたり、硬いものをかんだり、日常的な歯ぎしりや食いしばりでも生じます。耳の穴の近くにあるため、耳の痛みと自覚される場合もあります。投薬や顎を安静にすることで対応します。
(3)3型(関節円板の異常)
関節円板の位置異常で、口を開け閉めすると、カクカク・ジャリジャリなどの関節雑音を生じます。雑音だけの場合は特に治療を行いませんが、位置異常がひどくなり、雑音の代わりに開口障害を生じるようになると、開口練習に併せてマウスピース治療や投薬を行い治療します。
(4)4型(骨の異常)
顎関節を構成する骨の形の異常が原因です。このタイプは症状だけでは診断が難しく、X線検査で骨の形を確認して診断していきます。マウスピース治療や開口練習を行うことで治療します。また、骨の変形が著しい場合には手術を行うこともあります。
(5)5型(どれにも当てはまらないもの)
1から4のいずれにも当てはまらないが、顎関節領域に異常を自覚する心身医学的な要素を含むものとされています。

◯顎関節症を予防しましょう!
ストレスの多い現代社会において、無意識のうちに食いしばりや歯ぎしりをしている方が増えています。本来、安静にしている方の上下の歯は接触しておらず、食事や会話の時のみ接触します。そのため、食いしばりや歯ぎしりの癖があると、顎関節に長時間負担が掛かることとなり、顎関節症を生じることがあります。また、食事の時に片側の顎ばかり使ってかんだり、頬杖をつく癖のある方は顎関節症のリスクが高くなります。さらに、歯が無くなったまま入れ歯などの治療をせずに放置している方は、歯並びが崩れ、顎に負担が掛かることで顎関節症を生じやすくなります。
このように、顎関節症はさまざまな要因の積み重ねで生じる病気ですので、生活習慣の見直しや歯のチェックを行うことが大切です。

◯「顎関節症かも?」と思ったら
これまでお話ししてきたような症状があり、日常生活に支障を来すと思われたら、まずはかかりつけの歯科医院を受診しましょう。必要に応じて、当院歯科口腔外科との連携が可能です。担当医の小池尚史は(公社)日本口腔外科学会専門医を取得しており、顎関節の疾患に対する適切な判断をします。

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